38 / 63

第38話

消毒薬で消毒をして、大きめな絆創膏を貼る。血は出たものの、幸い深くまでは切れていなかったのが救いだろうか。 「これでよしっ!」  手当を終えた圭太が救急箱の蓋を閉める。 「お前に手当してもらうの、これで二回目だな」 「あぁ。そういえばそうだね」  以前、琉季が横領の濡れ衣でボコボコにされたことがあった。 「何度も面倒かけて悪いな、ホント」 「そんな……。でも、何で今日は店の前に来てたの?」 「え、あぁ。それは……今日休みで空いてたから、そういやお前んとこ行ったことないなと思って、来ただけだよ」 「あ、そっか。ありがとう。来てくれて嬉しいよ。それなのに怪我させちゃって、本当にごめん」 「いいって。気にすんな。このくらいどうってことないし」  琉季がサラリと圭太の頭を撫でた。なぜか、琉季の優しさが自分の心に流れ込んでくるような気がする。 「それより、お前に何もなくて良かった。俺が来なかったら、お前ヤバかったかもな」 「うん。あの人、本当は凄く優しくて良い人なんだよ。でも、僕があんな風にさせてしまったのかなって思って心苦しいかな」 「ほんとお前は甘いよな。あーいう奴って、元々持ってんじゃないのか?あんな面」 「そうなのかな」 「今度から気を付けろよ。危うくなったら、俺に言え」 「うん。ありがとう」  手当が終わってからも話し込んでいたら、ママの声がかかった。 「ケイちゃん!そろそろお店開ける時間よ」 「はーい!」  しゃがみながら話していた圭太は、促され立ち上がった。 「あ、琉季さん飲んでいくでしょ?」  せっかく来たんだから飲んでいって欲しい。しかし、あることに気付く。 「やっぱり傷あったらお酒はまずいかな」 「そんなことないだろ。いただくよ。お前の酒」 「分かった。じゃ、ちょっと待っててね」

ともだちにシェアしよう!