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第38話
消毒薬で消毒をして、大きめな絆創膏を貼る。血は出たものの、幸い深くまでは切れていなかったのが救いだろうか。
「これでよしっ!」
手当を終えた圭太が救急箱の蓋を閉める。
「お前に手当してもらうの、これで二回目だな」
「あぁ。そういえばそうだね」
以前、琉季が横領の濡れ衣でボコボコにされたことがあった。
「何度も面倒かけて悪いな、ホント」
「そんな……。でも、何で今日は店の前に来てたの?」
「え、あぁ。それは……今日休みで空いてたから、そういやお前んとこ行ったことないなと思って、来ただけだよ」
「あ、そっか。ありがとう。来てくれて嬉しいよ。それなのに怪我させちゃって、本当にごめん」
「いいって。気にすんな。このくらいどうってことないし」
琉季がサラリと圭太の頭を撫でた。なぜか、琉季の優しさが自分の心に流れ込んでくるような気がする。
「それより、お前に何もなくて良かった。俺が来なかったら、お前ヤバかったかもな」
「うん。あの人、本当は凄く優しくて良い人なんだよ。でも、僕があんな風にさせてしまったのかなって思って心苦しいかな」
「ほんとお前は甘いよな。あーいう奴って、元々持ってんじゃないのか?あんな面」
「そうなのかな」
「今度から気を付けろよ。危うくなったら、俺に言え」
「うん。ありがとう」
手当が終わってからも話し込んでいたら、ママの声がかかった。
「ケイちゃん!そろそろお店開ける時間よ」
「はーい!」
しゃがみながら話していた圭太は、促され立ち上がった。
「あ、琉季さん飲んでいくでしょ?」
せっかく来たんだから飲んでいって欲しい。しかし、あることに気付く。
「やっぱり傷あったらお酒はまずいかな」
「そんなことないだろ。いただくよ。お前の酒」
「分かった。じゃ、ちょっと待っててね」
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