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第59話

「皆、今日は本当にありがとう」  琉季が突然話し始めたので、スタッフ達は皆、琉季の方に視線を集中させた。 「皆に、聞いて欲しいことがある」  急に神妙な雰囲気を醸した琉季に、周囲はざわつき始める。 「何ですかー琉季さん。改まって」  スタッフの一人が囃し立てる。 「俺はこの店を辞めるけど、色々な人に支えられてきたと思う。それは凄く有難いなと思っている。けれど、これからは一人のために支えになりたいと考えている」  この言葉に、フロアはますますどよめいた。圭太も目を丸くする。 「それ誰っすかー?」と声も飛んでくる。 「それは……」  言いながら、琉季は一歩を踏み出し圭太に近付いてきた。 「それはコイツ」  琉季は圭太の肩に腕を回した。 わっと歓声が上がり、次いでスタッフ達は「いつの間にー!」とか「いいなー」などと囃し立ててくる。  圭太は恥ずかしくて仕方ない。嬉しいけれど。 「俺これから、コイツと生きていくことにしたんだ。酷いこととかもしちまったけれど、やっぱりコイツがいなきゃダメなんだ」 「琉季さん、これから何するか決めてるんすか?」  琉季の後輩が質問を投げかけてきた。 「あー、それはゆっくり考えようと思ってんだ。一応ぼんやりとしたビジョンはあるんだけどな。俺の人生、コイツがいればそれでもういいって感じかな」  そう言ってのけた琉季に、圭太は耳まで真っ赤にしてしまう。 「一生、俺の傍にいてくれ」  琉季は圭太の頬に手を添えて、皆の見てる前でキスをした。 その光景を見たスタッフ達は、大盛り上がりしている。 「琉季さん……」  皆が見てる前でされたことは、酷く恥ずかしい。

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