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第60話
「皆が見てるだろって思った?」
声を潜めて琉季が聞いてくる。
「うん……」
「俺は、これまで一緒に頑張ってきた仲間に宣言したかったんだ。これからお前と生きるって。お前は俺のものだってな。迷惑だった?」
耳打ちされた圭太は、顔を真っ赤にして首をブンブンと横に振る。
すると今度は頬に口づけてきた。
場内からは、囃し立てる指笛が聞こえたり「おめでとー!」という声が飛んだりしている。
ふと、自分の幸せの陰で泣いている人がいるのではないかという思いが、頭を過った。
今日の客たちは皆楽しそうにしていたし、恨めしそうにしている人はいないように見えた。
けれど、自分がそうだったように、他の客に嫉妬する人もいるかもしれない。
本気で、琉季を好きな人も実はいるかもしれないのだ。
それを思うと心苦しいが、自分は精いっぱい琉季と幸せになろうと心に誓った。
皆がワイワイと騒いでいる最中に、圭太は声をかけられた。振り向くと、そこにいたのはソラだった。
「いよいよここ卒業だね、琉季さん」
「そうですねー、これからどうなるんだろ」
「あ、だってケイタくんもいるんでしょ?きっと良い道が開けるって」
そう言ってくれるなら、そうなのかもしれない。
「そうだといいんですけどね」
圭太は苦笑した。
「何言ってるんだよ。ケイタくんが琉季さんと幸せになるんでしょ?大丈夫。自信持って」
「そうですね。僕もしっかりしなきゃな」
ソラは優しい目で見つめてきた。
「おめでとう。きっと素敵な未来が待ってるから。二人なら何でも乗り越えられると思うし、心配しないで」
「ありがとう、ソラさん」
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