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第62話
「決めた。俺バーやるわ」
「えっ、そんな簡単に決めていいの?」
「別に簡単じゃねぇって。前々から考えてたことだし、その時のために金も貯めてきたんだ。具体的なイメージが決まったってことだ」
「そうなの?それって、どういうこと?」
すると、瑠季は優しいキスをくれた。
「お前の地元で店開こうと思う」
「な、なんで!?」
「俺、家族他にいないしお前のお母さん、一人だと心配だろ?それなら、俺が行ったらお前も楽だろうしな」
「そ、それは嬉しいけど、新宿でやった方がいいんじゃ……」
「確かに、こっちの方が儲かるかもしれないな。でも、細々とした経営でもいいんだ。お前の生まれ育った街で暮らしてみたいし」
「ありがとう、康二さん」
圭太は瑠季の身体に腕を回して抱きしめた。
それに呼応するように、瑠季も抱きしめ返してくる。
「でもお前の仕事もあるよな」
「あー、うん。地元の施設に空きがあって、了解してもらえたらまた戻れると思うよ」
「じゃあ、引っ越しても大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
どちらともなく身を少し剥がし、顔を近づけていく。
「んっ……」
啄むようなキスでも甘美に感じられる。
こんなキスなら、一生味わいたいくらいだ。
軽かったキスは、どんどんと深くなっていった。
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