目覚めてスッキリした頭でふじくんを見つめた。真剣な瞳で僕を見つめ返すふじくんは、いつ見たって格好いい。 見とれながら昨夜のことをもう一度思い返した。 部屋に来るとすぐりくんではなく、ふじくんがいて、恋を諦めろと告げられた。 MVPに選ばれて少なからず調子に乗ったが、僕の本来の目的がすぐりくんではなく、ふじくんにあることを気づかれていたんだろう。 それを咎めるためにきっとふじくんは、すぐりくんに扮して僕を待ったんだ。 ショックでたまらなかったが、これは僕の蒔いた種で、受けるべき制裁だ。 しかし何故か、そのあとふじくんは僕を慰めてくれて、僕はますます戸惑った。 涙と混乱に疲れ果てて眠り、僕は吹っ切れた。だから思いきってふじくんに告げることにしたんだ。 寝起きでぼんやりした頭からはっきりと目覚めて、今、もう一度心に決めた。 そして静まりかえった部屋でそっと、けれどはっきりと告げる。 「ふじくん、僕と付き合ってください。」 本来なら、礼を告げて立ち去るべきなんだろう。この学園やふじくんにふさわしい子ならきっと、恋人がいる相手に告白なんてしない。 どうしたって、ふじくんの１番にはなれない。それが分かっていて、僕はふじくんに告白した。2番でも、3番でもいい。 ふじくんのそばにいたい。もっと近しい存在になって、ふじくんを支えたい。 驚いたのか、ふじくんは目を見開いてしばらく沈黙した。 ひとしきり僕を驚いた顔で見つめた後、ゆっくりと低い声で告げる。 「‥‥分かった。」 てっきり、こっぴどく振られると思っていた僕はかえって驚いてしまった。 ふじくんはひどく意地の悪い笑みを浮かべていて、初めて目にするふじくんの邪悪な表情に僕は体を強ばらせた。 そして、翌日に僕はふじくんに連れられてすぐりくんに会いに行った。 すぐりくんとは込み入った話もせず、MVPに選んだ経緯や他の隊員のみんなも僕を誉めてくれていた事を聞いた。 お茶をしながら、隊での出来事や今後の活動について話して数時間で部屋を後にした。 本当に楽しいひとときだった。 ふじくんからは帰り道に昨日は騙して呼び出したんだと謝られた。 謝るべきは僕の方なのに。 ひょっとして、ふじくんは僕の「付き合う」という言葉を勘違いしているんだろうか。 恋人、というか浮気相手としてではなく、今日すぐりくんと会うのに付き合ってほしいと捉えていたんだろうか。 唐突に不安になりふじくんを見上げようとしたその時、ふじくんが僕の手を握った。 しかも、恋人つなぎで！！ 驚いてふじくんを見上げると、当然だがとてもかっこよかった。 数秒間見つめあって、ふじくんが口を開く。 「‥‥何だよ？いいだろ、恋人なんだし。」 ふじくんはそういって目を反らした。 横顔すらも美し過ぎて、ときめきが止まらなかった。