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第10話 ※攻め視点

すぐりの恋人を宮坂に見られてしまった。 それだけならまだしも、会話も聞かれてしまったかも知れない。 夜、宮坂と別れて自室まで帰り、幸せな気持ちで眠ってしまいたかった俺は即座にシャワーを浴びに行くことにした。 しかし、簡単に用意を済ませて再び部屋を出たところですぐりに呼び出されてしまった。 生徒会寮と一般寮との間のラウンジに行くと すぐりとその恋人が手を取り合って見つめ合って、なにかを囁き合っていた。 「おい、何の用だ?」 無遠慮に問いかければ、ふたりはハタと息ピッタリにこちらを向いた。 いちゃつく様子を隠すこともせず、すぐりは恋人の手を頬に擦り付けながら返事をした。 「何の用って、宮坂さとくんのことだよ。」 俺は、今すぐりにいちばん触れられたくない話を堂々とされて、顔をしかめることを止められなかった。 「告白したんでしょ?さっきのあの態度はなんなの?」 俺は、すぐりと宮坂の会話にはほとんど口を挟まずに聞いているだけだった。 すぐりは、あの態度はとても恋人同士のそれじゃないと指摘しているのだ。 すぐりは俺が他人を好きになったことをおもしろがっているのか、時折、宮坂のことを話題にあげる。それにはもうウンザリだった。 恋人らしくないもなにも、宮坂が好きなのはすぐりなのだから当たり前だ。 しかし、能天気に恋人といちゃつくすぐりに正直に告げる気にもなれず、俺は口を閉ざした。 すると、すぐりの恋人が横やりを入れる。 「お前ら、誰がどう見たって両思いなのになー。」 その発言にますます腹が立って、俺はふたりに背を向けた。 「話ってそれか?なら悪いけど放っておいてくれ。ふたりの問題なんだ。」 それ以上なにも話したくなくて、すぐりの恋人の制止も聞かず、足早にラウンジの出口へと向かう。 中庭に抜けた辺りで追い付いてきたすぐりの恋人が俺に話しかける。 「なぁ、不躾で悪かった。あれでもすぐり、心配してんだよ?」 面白がってるの間違いじゃないのか、そう心の中で悪態をつきつつも、しつこく追いかけてくるすぐりの恋人に、とうとう俺が折れてしまった。 すぐりの恋人は持ち前の陽気さとひとの心に触れる器用さで、俺の話を聞き出して、挙げ句に「やっぱ大丈夫だ、お前ら両思いだから!」と笑った。 流れで一緒にシャワーを浴びて、お互いどうして相手を好きになったのかという話になった。 「俺はすぐりの冷静に見えて実は不安がってるとことか、しっかりしてるくせに突然自信無くすとことか、タフなのに繊細で支えてやらなきゃと思った。 実際、俺がいなきゃすぐりはダメだからなぁ。もう可愛くてたまらない。 最高の恋人。」 満面の笑みで「お前は?」と聞き返されて、言葉につまる。 「‥‥可愛い。いじらしい。努力家。」 多くを語りたくなくて、そっけなく返す。 「んー?それだけかぁ?もっとあんだろ! なぁ、ほんとに好きなのかー?」 からかうような視線に気づいて、こいつこそ面白がっていると悟った。 「‥‥っきだよ。」 適当に話を切り上げてシャワールームを出ようとした。 「もっぺん言ってみ?」 しつこく言い寄るすぐりの恋人を交わして扉を開けると、その先には宮坂がいた。 俺は瞬時に先ほどまでの会話を思い出す。 宮坂はきっとすぐりの恋人が誰なのか知らないはずだ。しかし、あの会話を聞かれていたら? ――俺がいなきゃすぐりはダメ ――最高の恋人 失恋したばかりの宮坂はきっと、恋敵になんて会いたくないだろう。 気弱で愛らしい宮坂のことた。きっとまた泣いてしまう。 そう思ってとっさにすぐりの恋人を後ろ手に隠したが、意味がなかった。 つんのめってうずくまった宮坂は俺の腕の中でまたしとしとと涙を流した。

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