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第13話
ドアをノックして、ふじくんが出てくるまで僕は緊張に震えながら待った。
ほんの些細な時間だったが、既視感を覚えてすぐりくんの部屋を訪れた最初の夜のことを思い出した。
あの日すぐりくんの部屋から現れたふじくんは、何故かすぐりくんのような雰囲気を纏っていた。今思えば、どこか思い詰めたようなそんな感じだった。
どうして、ふじくんの考えに気が回らなかったんだろう。
あの時もっとふじくんの立場で物事を考えられていたなら、今ふじくんがどう思っているのかなんて悩まずに済んだかもしれない。もっと、ふじくんに寄り添えていたかもしれない。
結局僕は、自分のことしか見えていなかったのだろう。
今日こそ、きちんとふじくんの気持ちを聞こう。そう心に決めてガチャリと音を立てた扉を見やった。
扉が開いて現れたふじくんは、こないだとは違って、飾らない、いつもの男らしいふじくんだった。
とは言え、シャワーを浴びた後だからか、髪型は昼間と違って、センターで分けてさらりと自然に流している。
「‥‥入って」
言われた通りに部屋に入って、ふじくんの寝室へと通してもらった。
ふじくんの部屋に入ると、ふじくんの男らしく色気のある香りが濃く漂って来た。
冷静に話さなければならないのに、僕の胸は自然に高鳴って止められなかった。
ふじくんに促されるまま、ふじくんが普段寝ているのであろうベッドに腰かけた。
ふじくんは備え付けのデスクチェアに座って体ごと僕の方を向いていた。
おもむろに、ふじくんは口を開いて話し始めた。
「宮坂、聞いてほしいことがある。」
僕は黙って続きを待った。
「最初にちゃんと言ってなかったかもしれないが、俺は宮坂が好きだ。」
信じられなくてふじくんの目を見つめた。ふじくんはすごく真剣な目で僕を捉えて離さなかった。
「けど、宮坂はすぐりが好きなんだと思ってたんだ。隊での活動はすごく楽しそうだったし、宮坂はいつもすぐりを見てたから。」
何も言えず、ふじくんが言ったことを頭の中でなぞる。
「宮坂が俺と付き合うことにしたのも、俺が双子の兄で顔が似てるからだと、そう思ってた。」
違う、そうじゃない。僕は、僕は――。
「俺が好きなのは宮坂だけだ。遊びでも、浮気でもない。たとえ宮坂が今はすぐりを好きでも、俺に本気にさせるつもりだ。」
違う、僕だって、僕も、
「だから宮坂‥‥‥‥‥‥宮坂?」
僕は、気づいたら涙を流していた。
ふじくんは慌てて僕の頬にその大きくてたくましくて格好いい手を伸ばし、涙をぬぐってくれた。
「大丈夫か宮坂?」
何も言えずコクコクと頷いて、僕はふじくんに抱きついた。
「っ!?‥‥宮さ、か?」
さっきよりも強くふじくんの香りがする。
驚いたのか、戸惑った声を上げたふじくんはすこしの間の後でそっと僕の背中に手を置いた。
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