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第3話
………
シャー
何故こんなことになっているのか……
Tシャツ半パンに着替え、僕は今ひたすら知らない男の髪を洗っている。
一度洗っただけじゃこの臭い匂いはとれない。
クソ!!
何回もシャンプーボトルをプッシュした。
「んーあったかい水何とも不思議な感覚」
おとなしく丸くなっている男の背中は細く背骨が浮き出ていた……
スゲーガリガリじゃん………
スポンジを渡して身体を洗うように指示するけど、上手く洗えないのか同じところばかり洗っていて見ていてイライラしてくる。
股間はさすがに自分で洗わせて結局僕がゴシゴシ洗い上げる始末。
「……さっき着ていた制服、どこに置いた?」
男が着ていた制服が脱衣場に見当たらない。
風呂に入るときな確かにここで脱いだはずなのに……
「あーあれ必要ないから消した」
「……は?消したって…着る服どうすんだ」
「これじゃ駄目?」
バスタオル片手に全裸アピールされた。
「駄目に決まってるだろ!」
……
仕方なく……兄のスウェットを貸した。
痩せているけど、僕より身長は高くやや猫背。
べったり汚れていた黒髪は乾かすと以外とふんわり猫っ毛だ。
そして以外と顔は整っていて妖艶な雰囲気が漂う。
……この姿も作られた偽物なのかもしれない。
家の中を興味深く見渡す男の姿を見て思った。
「で、お前だれ?……なんで僕の名前知ってるんだよ」
「んーそれは置いといてさ……」
「置いといてじゃねぇだろっ!」
うぐ!!
「しぃ……静かに……」
手のひらで口を塞がれてしまった……!
洗ってる時も思ったけど、今触れても何も起こらなかった……
さっきこいつが僕の腕に触れた時は、焼け爛れていたのにそれが今はない……
目の前の男は、無言のまま瞳を閉じたままその場から動かない。
……く、苦しいんだけど……
「……あった」
はっとして進む方には僕の部屋だ……当然お構いなしにガチャリと開けて侵入する。
「ちょっと!おい!」
化け物か妖怪か知らないけどムカつく奴!僕の部屋の棚に置いてあった物を手に取りマジマジと眺めている。
あれは……
……僕の宝物……
小さい頃、ある浜で拾った真っ白い石。
宝石のようなキラメキはないけど、きめ細かく触るとしっとり肌に吸い付きとても滑らかで気に入っている。
「これこれ……返してもらうよ」
「え」
その石をうっとり眺めながら男は視線をこちらによこす。
「これは俺のなんだ」
「は……な、なんでだよ。これは僕がずっと持って……」
「その前から俺のだって決まっていたんだよ。やっと見つけた……」
「でも!これはっ……」
「じゃあね!サク……もう会うこともないかな」
!!!!!
そう言うとその男は、黒い闇となってあっという間に消えてしまった。
……ななな……
何なんだよあいつっ!
めっちゃ頭に来る!!!
怪しい男はただの泥棒だった。兄の服も着て行ってしまった……
それにあの石は……
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