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第5話
「お、おい……」
「……」
被さる男をそっとどかし、起き上がる。
男の身体は冷たくヒヤリとしていて酷く具合が悪そうだった。
震えてる……
さっきまで自分の首を絞めていた奴だけど……とても苦しそうで可哀想になってくる。
「大丈夫か?おいって!……に、兄ちゃーん!」
隣の部屋で爆睡中だろう兄を起こす。
「何だよ……紗久……また何かあったか……!!な、な何だよお前!おお男?!連れ込んだのか!胸っ!胸に!何のプレイだっ!!」
「馬鹿っ違う!訳は後で!こいつ何か具合悪いみたいなんだけど!」
三橋彩果
26歳
市役所勤務
かなり呑気な兄。
ぐったりしている男を僕の布団に寝かせ、呑気な兄に事情を説明した。
兄には僕の身に起こる怪奇現象のことを普段から話していたので、すぐ理解してくれた。
けど彩果はそれらの類いは全く見えないし感じないからいまいち実感はないようだ。
「腹……減ってるんじゃないか?」
「へ?」
真剣な顔して馬鹿な兄が呟く。
「おい、お前しっかりしろよ!お兄さんが今うまーいラーメン作ってやるからな!」
「ちょ……!ラーメンって……!」
寝ている男をポンポン叩き兄はキッチンへ行ってしまった……横になっている男は未だ苦しそうだ。
意識はあるみたいでうっすら瞳をあける。
とりあえず水!飲むかな……
急いで水をコップに入れて男を無理矢理起こして水を飲ませる。
「おい、とりあえず水飲んで」
「……腹……減って……ヤバ……い」
何!!?
に、兄ちゃん凄い!?
男はゴクゴクと水を飲み干す。
「お待たせー!」
野菜炒めがのった具だくさんの味噌ラーメンをテーブルに置き男に箸を渡した。
ゆっくり箸をつけモソモソと食べ始めた男は、すぐにペースを上げてがっつく。
何だよ生き倒れかよ……化け物のくせに……
兄弟が見守る中あっという間にラーメンを平らげてしまった。
「……美味しかった……ごちそうさま……でした」
「はいどうも。少しは元気になったかな?話できるかな?」
顔色は幾分ましになったみたいだけど、やっぱり具合は良くないみたいでだるそうにしている。
整った顔が青白かった。
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