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第14話
自宅はマンションの6階。3LDKタイプでそこに兄と二人暮らしだ。
父さんは現在転勤中で留守。母親は病気で既に他界している。
制服からTシャツとデニムに着替え、制服をハンガーにかける。
ベランダに干してある洗濯物は乾いていたので取り込んでおいた。
今日はからっとした天気で海から吹く風が気持ちいい。
現在兄ちゃんと二人暮らしなのでやることは色々ある。
僕は料理が得意ではないから料理担当はもっぱら兄ちゃんだ。
だから洗濯物を畳んだり風呂掃除したりは大体僕。
あーあ……
洗濯物を畳ながらぼーっと考えてしまう。
ハム太が、居なくて寂しい。
……
あいつ……あれからどうしたかな……伎乃 っていう名の化け物。
僕にあんなことした、す、スゲー失礼な……奴……
元気にはなったみたいだけど……住んでる家とかあったりするのかな。
化け物なのに、姿が人間だからなのか親近感を覚える。
耳朶を何気無く触る。
伎乃に噛まれた傷はほとんど回復して痛みもなくなっていた。
でも耳朶の裏に違和感。
親指と人差し指で耳朶を挟むと小さいけれどしこりのようなモノが出来ていた。
変な感じの耳朶になった。
あいつのせいだ……
「また、ハムスター飼いたいなぁ。かわいい子!」
んー!と背伸びをしながら何気無く呟いた。
パキ…
イマノキイタ マジヵ…マジダ
「ん?」
ラップ音に混じって、何か聞こえた気がした。
良く聞き取れなかったけど……
へ、変なことしてきたら叫ぶぞ僕は。
軽い怪奇現象はあるものの何か危険を伴うようなことはあれからない。
でも夜中は怖くて、実はあまり寝れていなかった。
少しの物音でも怖くて起きてしまう。
できれば兄ちゃんと同じ部屋で寝たいけど、さすがに恥ずかしいのとプライドが許せないので今まで通り自分の部屋で寝ている。
はぁあああ……僕って本当に怖がりだったんだな……
この霊感体質がなくなればいいんだけど……やっぱり見えるし聞こえる。
はぁ……疲れる。
あー兄ちゃん早く帰ってこないかな。
お腹空いたし……
……
「おーい、紗久ー帰ったぞー!ほら上がって上がって」
「……」
「なんだこんなところで寝て……おい起きろ!夜寝れなくなるぞ」
「……ん……兄ちゃんおかえり」
「ただいま」
?
兄ちゃんのドタバタした方向とは違うところから「ただいま」の声がして、起き上がりながらその方を見る。
……
は?
しゃがみ込みながら僕の顔を覗き込む人物を見て固まってしまった。
そいつはやんわりと笑っている……
「紗久、久しぶり」
目の前の人物は伎乃だった。
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