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第19話テンニュウセイ
「都内の私立校から転入してきました。吉川伎乃です。よろしくお願いします」
「「よろしくー」」
ざわつくクラスメイトを眺めるのも面倒で教室の窓から外を眺めた。空が青くて気持ちがいい。何となく予感はしてたけど…やっぱり同じクラスかよ。
「吉川くんちょっとカッコいいよね…」
「うんうん雰囲気あるー」
こそこそと話す女子の会話は浮かれている。カッコいい…のか?まぁ…悪くはない…?身長そこそこあるし顔小さいし?
僕は窓側の一番後ろ、伎乃は廊下側の一番後ろの席だ。伎乃は涼しい表情をしながら真新しい教科書をペラペラめくっている。普通の高校生に見えるんだけどなぁ…
「…ねぇ三橋…」
「ん」
「後輩がさーこの間の返事聞かせてだってよ。次の休み時間南館来てだって」
「…あー。わかった」
クラスの女子からぽそりと言われ思い出す…先週後輩からコクられたんだった…少し可愛い子だったけど…知らないし興味ないし…ですっかり忘れていた。僕のどこがいいんだろう…南館かぁ…面倒だけど仕方ないか…
休み時間、伎乃は好奇心旺盛な男子や女子から質問攻めにあっていた。東京から来た都会人にみんな興味津々だ。
僕は…南館に行って一年生の女子と会っていた。校舎が北館、本館、南館と別れていて南館には理科室や美術室、音楽室などがある。前回コクられたところ…理科準備室の前に行くと先に来ていた一年。
「おまたせ」
「み、三橋先輩、呼び出してごめんなさい!」
「ん、前の返事だよね…あのさ、聞きたいんだけど僕のどこがいいの?」
「え、あの…一目惚れです…三橋先輩カッコよくてキレイでその時私見とれてしまって…そんな先輩と仲良くなれたらいいなぁって思って」
「…そっか…えっと有り難う。でも僕今そういう彼女とか好きな奴とか興味ないから期待に応えられそうにないんだ…ごめん」
「…と、友達とかも駄目ですか?」
「あ、無理」
「!」
「ごめんね」
我ながらいつも失礼な断り方してると思う。
友達やメル友くらいなってやれよって要とかが言うけどいつもこう言って断っている。
だってさー知らない奴と急に友達になれる?
そっちは知りたいだろうけどさ、メルアドの交換とか連絡先教えるのってこの先そいつと関わりたいかどうかでしょ?
僕は貴方と関わりたくないよ?…って思うんだよ。知らないもの君のこと。
どんどん僕の印象悪くなると思うんだけどさ。
でもそうなんだから仕方ないじゃん。
「ごめんなさい…」
ペコリとお辞儀をして後輩は走って行ってしまった。
はぁ…
こうやって断るの…疲れる。
本館から賑やかな声が南館まで響いてくる。
南館は使用しないときはとても静かだ。
…南館…ここはあんまり好きじゃない。
いつも感じるこの違和感。
色で例えると本館が白ならここは灰色だ…
前の僕なら気にもしないで通りすぎるんだけど…今は違う。
…さわさわして…不安になるー
コワーい
ヤバい…
早く教室戻ろう…
「紗久!」
「わーーー!!!」
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