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第20話
「わーーー!!」
「紗久!俺だ俺!伎乃だよ」
いきなり後ろから声をかけられつい叫んでしまった!
気配を感じなくて完全に気を抜いていたから尚更ビックリしてしまったじゃないか。
「し、伎乃…」
「紗久、ビビり過ぎだから…そんなに驚くなよ。俺の方がビックリするだろ」
「き、急に何だよ!何でここにいんだよっ」
「紗久がどっか行くから後ついて来たんだよ。まさか告白の返事しになんて全然思わなくてさ。紗久って…モテるのな…」
「…モテたくてモテてる訳じゃないよ」
「バッチリ…女子泣いてたな」
「…」
「ま、下手に友達から!って言って期待させるよりいいんじゃね?」
「…うん」
そう、可能性ないのに期待させるのは可哀想だ。僕があの子とつき合う可能性は悪いんだけど1ミリもない。
「でも、紗久の後つけて来て良かったかも。ここはあっちの校舎とちょっと違うよね…わかる?」
「うん、わかる…居心地悪いよな…」
伎乃は平然としている様子だけど何かを感じとっているみたいだ…そう…ここは違う…
違和感…
「さて紗久?気がついているかわからないけどこれってさ、このまま抱きしめてもいいのかな?」
「え」
自分の今の状態…に気がついてハっとした。
驚いた勢いで退くはずが何故か伎乃のワイシャツを両手でぎゅっと握りしめている自分がいた。…伎乃との距離は驚くほど…ち、近い。
…ヤバ…全然気がつかなかった。
昨晩…知らなかったとはいえ一緒に寝ていたせいか伎乃に近づくことにあまり抵抗がない…体温が感じられる距離だ。
…
恥ずかしくて動揺している自分を必死に隠しワイシャツからソーっと手を話した。
…
な、何やってんだ僕は…
「ごめん驚かせた」
「…別に」
斜め上から伎乃の視線を感じる…
「こ、この場所…嫌だから早く教室戻ろうぜ」
気を取り直すように伎乃の顔を仰ぎ見てにそう言った。
ちゅ
…
一瞬何が唇に触れた気がした…
ンですけど?
「…な、何か…今したか?」
「何も?ほら行くぞ」
バタバタと二人足早に本館に向かう。
もうすぐ授業が始まってしまう時間だ。
何も?
…い、い、今のはキス…では??
「伎乃、やっぱり今のっ!」
「何もっかいする?」
!!!!
すまし顔でそう言われ周囲には他生徒がいたので怒るに怒れない。
掠めるような一瞬のキスだった…
な、な、な、なああああ!!
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