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第21話ホウカゴ
ふざけるのもいい加減にして欲しい。
あれから伎乃は普通に授業を受けて休み時間はクラスの女子たちが校舎を案内してくれていた。
僕はキスをされたイライラが消化できずにため息をついてばかりだ。
気にしない気にしない。そう自分に言い聞かせながら鞄に荷物をしまい下校の準備をする。
本当に軽いキスだったけど…キスはキスだ。
一瞬だったのに柔らかい唇だった…とか覚えていたりして…無駄に胸がドキドキしている。
「クソ…伎乃のバカ」
放課後、伎乃をおいて先に帰ってやる!先生と何か話してたし一緒に帰る気にもならない。
他のクラスの女子が一緒に帰ろうと声をかけて来たけど丁重に断った。女子は恋愛の話が好きで一緒に帰っても大抵そんな話題になるから好きじゃない。
隣のクラスを覗いたけど要の姿もなく…結局一人で帰ることにした。
あいつ…家に帰って来たらガツンと言ってやる。
一人、二年生昇降口に向かう…
…チャリン…
?
背後…通りすぎた後ろから何かが落ちたような音が聞こえて振り向く…
あれは…
「あー!君それとって貰えるかな?ちょっと手が離せなくてっ」
両手いっぱいにプリントやらノートを抱えて困っている白衣を着た先生が立っていた。
見るからに大荷物で大変そうだ。
「あ、はい」
どうやら鍵を落としたみたいでそれを拾い上げた。
「ごめんね。この資料しまいに行くんだけど、鍵このプリントの上に置いていいから」
「え、でも先生両手ふさがってるし開けられないですよね?イイですよ、僕鍵やりますよ」
「おー!有り難う!助かるよー」
「なんか…凄い量ですけど大丈夫ですか?」
「あはは。調べものがあるんだけどなかなか片付かなくてさ。探してる資料がみつからなくて参ったよ」
先生と話しながら歩いてやって来たのは南館だった。
あれ…ここ…休み時間に後輩と会ったとこ。
この鍵…
理科準備室の鍵だ。
そう思いながら…鍵を開ける。
そういえば…
この先生…
何先生だっけ?
カチリ
何故か鼓動が早まる…
僕は背後に立っているだろう…その先生を振り向けずにいた。
冷や汗が…流れる…
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