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第22話ジュンビシツ
あー駄目だ…完全にビビって叫ぶことも出来ない…
薄暗い準備室の中は何故か肌寒くて居心地が悪い。以前にも入ったことはあるけどここまで違和感を感じたことはなかった…
鍵を開けて「じゃあね!先生!」ってそのまま帰れば良かったのに…開いた扉の中に吸い込まれるように入ってしまった…
何やってんだ僕は…
先生らしき者は荷物を机に置きしきりに何かを探している。机の引き出しや棚その周辺。
微かに薬品の匂いが漂う室内の居心地の悪さ。
「まさか…私の姿が見える生徒がいるなんてね。しかも…手伝ってくれるなんて思わなかったよ」
「…」
「なかなか探しているモノがみつからなくてさ。困ったもんだよ…とても大事なモノなんだけどなぁ」
ああ…
どうしよう。
動けない…呆れるほど怖くて完全に足がすくんでいる。
でもこの先生から目が離せない…
以前からこの者はこうやって探しモノをしていたんだろうか…僕は霊感は強い方なのに何故今まで気がつかなかったんだろう…
しきりに何かを探している先生を眺めるしかない僕は…血の気が引くのを感じながらも胸が締めつけられそうだった。
「」
…恐らく探しモノは見つけられないだろう…
『何を探しているんですか?』
そう聞きたいのに声がでない…
今更ながら一人で帰らなければよかったと後悔する。
伎乃…
先生はこちらに向き直り手探りに辺りをさ迷い歩く。バラバラとプリントや資料らしき本が辺りに散らばった。床をベタベタ這いながらやってくる姿は不気味だ。
僕の足元に触れペタペタと身体を触られる…脚から徐々に腹から胸…顔を撫でられピタリと
手が止まった。
生臭い匂い…呼吸はしていない…
目の前には凹んだ闇の穴が二つこちらを見ていた…
そう…
先生には両目がない…
「…これがあれば見つけられる…な…」
!!!!
僕の視界いっぱいに先生の手が映る。
…瞳をとられ…
た、と思ったら身体がグイっと後ろに引っ張られ僕は誰かの腕の中にすっぽりおさまる。
「はいはい、それは駄目」
!!
「伎乃…?」
「どこに行ったかと思ったら…何やってんだよ」
「何で…ここに?」
「紗久のいる場所わかるんだよ?俺」
「あ、声がでる」
「え、何?びびって声も出せなかったとかそんなの?」
「…うるさいな」
伎乃がいることで不思議と先程までの不穏な空気が一変した。目の前にいる先生が予期せぬ来訪者に戸惑いをみせ沈黙している。
「ふぅん…変なのが住み着いてるな…悪意はなさそうだけど…ん…ほっとくのも良くないかな。眼球えぐられたら嫌だもんね」
「あの先生…何か探しているみたいなんだけど」
「ふぅん…そう…。つか、紗久ー嫌がらないんだな?俺に抱きしめられてるのに」
「…い、今はここが一番安全だと思ったからこれでいい!でもキスしたら殴る」
「そういう危機管理能力はあるんだな。確かにこいつ何するかわからないから俺にくっついてた方がいいよ」
ぎゅっぎゅ…
な、何か…
無駄に抱きしめられてる気が…する。
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