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第7話

HARU、爛漫☆第4楽章『初めての事件』 ふたりとの泊まり生活も、母親が帰ってきた事で終わった。 この間で俺は春希とも春翔ともそれなりの関係になっちまった訳だけど、ふたりとも自分を選べって言わないでいてくれてるから俺はそのまま週1でふたりのどちらかと過ごして、その時には……エロい事も引き続きしてたんだ。 「陽ちゃんとまーちゃんにお世話になったから、うちでお礼のパーティをしましょ!」 帰国してすぐ、まだ海外生活気分なのか母親がそう言い出して、土曜日に春希んちと春翔んちの母親を招いてうちでパーティをする事になった。 俺も部活の練習試合が終わったら料理を手伝う羽目になったけど、応援に来てくれてた春希と春翔もそのまま一緒にうちに来て手伝ってくれたから助かった。 ****************** 「春希くん、春翔くん、悪いわねぇ、おもてなししなきゃいけないのに手伝ってもらっちゃって」 「とんでもない事です。むしろ僕たち、春楓の家で楽しく過ごさせて頂いたのでこれくらいさせてください」 テーブルに食器を並べながら、ウチの母親に笑顔を見せる春翔。 「ふたりとも、ありがとね!」 「いえ、春楓と過ごせてとても楽しかったのでこのくらいは……」 料理を運ぶ春希はいつものクールな感じだ。 「春希くんも春翔くんもすっかりイイ男になっちゃって。春楓、あんたふたりに迷惑掛けてないわよね?」 グラスを並べてる俺に母親が言ってくる。 「んな事してねーよ!な?」 「うん、一緒にご飯作ったりピアノ弾いたりしてすごく楽しかったよ」 「春楓、今回は僕たちと勉強してるからテストは大丈夫じゃない?」 「まぁ、ふたりにお勉強見てもらっちゃってたの?ありがたいわぁ」 仲良しの幼馴染の顔をする俺たち。 そこに春翔と春希の母親も手土産を持ってやって来て、パーティは始まった。 「かんぱーい!!」 「おかえり、響(きょう)ちゃん」 「響ちゃん、ドイツでのお話、ぜひ聞きたいわ」 母親たちは息子たちにお酒を注がせて盛り上がっている。 俺たちはそれぞれの親の隣でその話を聞きながら料理を食べていた。 「久しぶりの演奏、充実してたのね!響ちゃんのピアノ、聴きたいわぁ」 「私も!響ちゃん、ピアノ弾いてちょうだい!!」 「え?いいの?酔っ払いのピアノよぉ〜」 こうして集まって飯食べるの、いつぶりかな。 母親たちもお酒のペースが早くてすぐに酔っ払ってる。 3人は食事もそこそこに、ワイワイ盛り上がって下の教室へ向かっていった。 「楽しそうだね、母さんたち」 静かになったところで春翔が口を開く。 「あのテンションにはついてけねぇわ」 「そうだね……」 顔を見合わせる俺たち。 「そういえば来週の月曜の音楽、合唱コンクールの事を決めるんだよな。お前らどっちか伴奏頼まれるんじゃね?」 うちの学園では毎年、市のホールを貸し切って中学部と高等部のクラス対抗で合唱コンクールがある。 去年はみんなバラバラのクラスだったから俺たち3人は全員ピアノ伴奏をやらされて、俺のクラスが高等部1年生で唯一上から3番目の努力賞をもらっていたりする。 あの時のピアノ伴奏、早い曲だったから弾いてて楽しかったな。 「春楓だって弾いてたじゃないか。でも、今のクラスなら声をかけられるのはきっと僕か春希だろうね。自分から言うつもりはないけど、もし言われたら僕は伴奏は春希にやってもらいたいな」 「歌いたいんだな、春翔は」 「うん、歌いたい」 俺が言うと、春翔は俺が作った玉子焼をつまみながら嬉しそうに即答する。 「春翔、僕は伴奏の方が好きだからそれでもいいけど、その時は春楓を指揮者に推して欲しい」 春希も俺の作った玉子焼をつまみながら話した。 「えっ、俺?マジかよ」 「いいよ。中学部の時、春楓が指揮で春希が伴奏、僕がリーダーになって歌って中学部で初めて優秀賞取ったよね。またあんな風に歌えるなら最高だよ」 「いいよね?春楓」 「しゃーねぇなぁ、分かったよ」 楽しそうなふたりに俺は嫌だと言えず、もしそういう事になったら引き受ける事にした。 春翔に言われて思い出したけど、中学部3年の時、父親の事を知った女の子から指揮者に推薦されて指揮をやった事があった。 それは明日南からの差し金っぽかったんだけど、春希がピアノ伴奏、春翔が合唱全体のリーダーに立候補してくれて、俺たち3人が主体になって2番目に良い優秀賞を取る事が出来た。 あの時、話を聞いた父親が連絡をくれてオンラインで教えてもらったんだよな。 親父、俺が指揮やるって聞いた時、スゲー喜んでたっけ。 また喜んでくれるのかな。 「はるかー!はるかー!アンタもピアノ弾きなさい!!」 「はるき、あんたもよー!!」 「はると、それに合わせて歌いなさーい!!」 そこに、母親たちのテンションの高い声が聞こえてくる。 「酔っ払い過ぎだろ、うちの母さん」 「楽しそうだからいいんじゃない?僕、春楓のピアノで歌えるなら喜んで歌うよ」 「僕も春楓とピアノ弾けるの、楽しみだな」 俺たちはその声に応えて母親たちのいる場所に向かった。 「母さん、何弾けばいいんだよ」 「そうねぇ、春翔くん、お母さんに聴かせたい曲は?」 「そうですね……」 うちの母親の無茶ぶりにスマートに対応する春翔。 そんな春翔が選んだのは、少し前にヒットしてて結婚式でもよく使われてる男性歌手の歌だった。 弾いた事はなかったけど、教室に楽譜があったから春希と相談して即興で伴奏を連弾し、春翔に歌ってもらった。 ゆっくりとしたテンポの曲。 その歌詞は独り立ちする子供が親に宛てるメッセージみたいな感じで、こないだの事があったから春翔がおばさんに宛てて歌ってるって思った。 「あんた、ピアノ上手くなったわね。今の曲、ゆっくりなのに感情がちゃんと載ってて良かったわよ」 「……そりゃ、どーも」 弾き終えると母親たちは拍手をしてくれて、俺は母親に初めて褒められた。 酔っ払ってるせいだと思うけど、いつもダメ出しばっかだから嬉しかったりする。 「春翔……ありがとうね。こんなに素敵な歌をプレゼントしてくれて……」 「母さん、泣かないで。恥ずかしいよ」 おばさんはめちゃくちゃ泣いてしまってて、春翔はそんなおばさんを宥めている。 「春翔くん、歌も上手くなったわねぇ、これは泣けちゃうわぁ」 「母さんまで……恥ずかしいんだけど」 隣にいたおばさんも泣いてて、春希は困った顔をしていた。 「あんたたちが立派になってくれて本当に嬉しいわ。あんなに小さかったのにねぇ。……そうだわ、初めて3人でピアノを演奏した時のDVD、上にあるはずだから皆で見ましょ」 うちの母親まで泣いてるのかと思えば、そんな事を言い出してひとりフラフラしながら2階に行ってしまう。 「懐かしいわね。確か小学部の低学年の頃だったわよねぇ、発表会で3人で弾いたの」 「そうね。あの時は私たちもドキドキしてたわよね……」 おばさんたちもだんだん落ち着いてきたのか普通に会話し始める。 そこに母親がDVDを持って戻ってきた。 「この時、うちの春楓が足引っ張っちゃったのよねー」 「うるせーよ!」 忘れもしない、小学部2年の時、初めて3人でピアノを弾いた発表会。 きらきら星を弾いたんだけど、その時の俺は合わせるっていう事が出来なくて、本番まで1度も合わせられなくて。 当日も俺だけテンポが早くてふたりに合わせられてなかったのに、ふたりが俺に泣いて謝ってきたんだよな。 母親にはめちゃくちゃ怒られて、今でも最悪な発表会だったって思う。 「あの泣いてたふたりがねぇ。こんなに立派になっちゃうんだもんね」 「春楓くんがずっと支えててくれてたからよ」 「そうよね。春翔も春楓くんがいたからここまで来られたと思うわ」 「そうかしら?春楓の方がふたりに助けられてきたと思うけど」 ひどい演奏を聴きながら、母親たちはそんな話をしてる。 母さんたち、俺たちの関係を知ったらどうするんだろう。 春希も春翔も、親に泣かれたら俺から離れるのかな。 そしたら俺は、どうなるんだろう。 ……嫌だ。 エロい事は恥ずかしいけど、春翔も春希もいなくなって欲しくない。 ずっと一緒にいたい。 DVDを見ながら昔の話をしてるふたりを見て、俺は自分のそんな想いに気付いてしまったんだ……。 ****************** 月曜日。 いつものように3人で登校して、授業を受けて。 音楽は最後の時間で、俺は他のメンバーで決まってくれる事を願ってたけど予想通りクラスの女の子たちが春希と春翔の名前を出してきた。 「青木くん、赤木くん、推薦多数ですがどうですか?」 「僕は歌いたいので、全体のリーダーに立候補させて頂きたいです。伴奏は赤木くんに、指揮は黄嶋くんにお願いしたいです」 先生の言葉に春翔がこう言うと、女の子たちが騒ぎだす。 「青の貴公子さまって歌もお上手よね」 「そうよね!去年の学祭の時の貴公子さま、素敵だった〜!!」 「そういえばあの時、黄嶋くんも一緒に出てたわよね」 そこに、小学部から一緒の奴が口を挟む。 「お前ら知らねーのかよ?春楓、中学部の時に指揮者やって優秀賞取った事あるんだぜ?しかも父親はあのキジケンだし」 「えっ!?そうなの?キジケンって有名な指揮者でしょ?黄嶋くん、そんなにスゴいの?」 そいつのせいで余計にザワつく教室。 「皆さん、関係ないお話は止めましょう。赤木くん、黄嶋くん、青木くんの意見についてどう思いますか?」 「僕は皆が良ければ構いません」 「お……俺も……俺でいいなら……」 ザワついた中、なるべく目立たないように言ったけど無駄だった。 結局、俺が指揮、春希が伴奏、合唱のリーダーは春翔になり、課題曲の楽譜が配られてパート分けで授業は終わった。 「黄嶋くん、貴公子さまたちと何で一緒にいるか分かんなかったけど、スゴい人だったんだね」 「そう?スゴいのはお父さんだけなんじゃない?優秀賞取った時だって貴公子さまたちがいたからでしょ」 終礼前、担任が来るまでの間にそんな話をしてる女の子たちがいた。 俺が色々言われるのはいつもの事。 でも、俺よりも気にするふたりが黙っちゃいなかった。 「ちょっといいかな?君たち、春楓の事、どうしてそういう風に言うのかな。聞いていて不愉快なんだけど」 「あ、青木くん!」 「春楓の事を何も知らないであれこれ憶測で話す。不快でしかないです。これでは合唱コンクールの成績は期待出来ませんね」 「赤木くんまで……」 「お前ら、止めろ!!」 真っ青になってる女の子たち。 その前に立ちはだかって言う俺。 俺には絶対見せない冷たい目をしてたふたりは、俺の言葉で気持ちを落ち着けてくれた。 「……ごめん、春楓。僕たち大人げなかったよね」 「あぁ、つい我を忘れてしまってたよ。春楓、ごめん」 ふぅ、とりあえず何とかなったな。 女の子たちも落ち着いたみたいで、その後は静かになった。 ……こんな事してて、変な噂とかないんだろうか。 マジで心配になる。 ****************** 部活前、父親に事情を書いたメッセージを送ったら、その夜に父親からオンライン通話しようというメッセージが来ていた。 言われた通りにすると、めちゃくちゃ興奮して喜んでる父親の姿を見ることができた。 「春楓、今度春希くんを呼んで実際にやってるところを見せてくれ!」 「わ……分かったよ。春希の都合を聞いたらまた連絡するから」 「春楓がまた指揮をするなんて……何てファンタスティックな話なんだ!!」 興奮のあまり、父親の声がデカすぎてめちゃくちゃ音が割れていた。 そんなに嬉しい事なのか?って思うけど、父親の笑顔が見られたのはすごく嬉しかった。 「春楓、コンクールはいつなんだい?」 「えーと……」 俺は行事予定表を見ながらその日を父親に知らせる。 「ワオ!日本公演があるから帰国してる時じゃないか!!必ず見に行くよ!!」 「えっ、マジかよ」 会えるのは嬉しいけど、父親に見られて指揮するなんてめちゃくちゃ緊張モンだ。 あとは……父親が騒がないか心配だ。 前にサッカーの試合を見に来た時には、俺がシュートを決めたのを見て泣きながらグラウンドに入ってきて俺に抱きついてきたし。 外国暮らしが長いからなのか、元々そうなのか、いちいちリアクションがデカいしすぐテンション上がって訳分かんない事すんだよな、うちの父親。 とりあえず、春希と春翔には話しとかないとな。 俺は父親との通話を終えると、ふたりにメッセージを送っていた。 ****************** 「おじさんに聴いてもらえるなんて光栄だよ」 「あぁ、緊張もするけどね」 翌日、学校を終えてピアノのレッスンも終えた後、俺たちは合唱で使う為の動画を撮る為に春希の家に集まっていた。 春希が伴奏とパートごとのメロディを弾いてる所をスマホの動画を使って録音し、それをクラス全員に送信する。 これで各自で音を覚えてもらって、朝練ではちゃんと覚えているかを確認しながら練習する事にした。 春希と春翔はコンクールの日もそれから割とすぐ後にあったから、合唱の他にそっちの練習もあって大変そうだった。 でも、ふたりは俺との初Hを賭ける事にしてるからと言ってかなり気合が入ってたんだ。 そんな中、合唱コンクールまであと1週間、ピアノコンクールまであと3週間っていう時に事件は起こった。 「はぁ、次は数学かよ、寝ないようにしねぇと」 「春楓、今の席で寝たら絶対目立つよ」 「後ろの席の方が先生の目に入りやすいからね」 音楽の授業を終えて、3人で話しながら教室に戻ろうと階段を降りていた時の事だった。 いきなり、春希がバランスを崩して階段から転げ落ちていった。 「春希!!」 何が起こったのか分からなかった。 でも、階段をダッシュで降りて、春希が倒れている踊り場に向かう。 「立てるか?春希」 「う……っ……!」 起き上がろうとしてるけど、右足が痛むのかなかなか立ち上がれない春希。 「春楓、ふたりで支えよう」 「お、おう」 春翔の言葉で、俺は春翔と春希の脇を抱えてなんとか立たせる。 「ありがとう、ふたりとも……」 「とりあえず保健室を目指そう。春希、歩けそう?」 「ん……何とか……」 痛そうにしながら左足だけで歩く春希。 その後、保健室で応急処置をしてもらったけど、その足は腫れていて捻挫しているように見えた。 「誰かに押されたと思う」 保健室のベッドに腰かけた春希がそう言った。 「……僕らの事を良く思っていない人がいるって事だね……」 「だとしたら明日南しかいねぇだろ。こんな卑怯な真似するなんて絶対許せねぇ!」 春翔の言葉に、俺は頭に血が上っていくのを感じた。 今まで色々あったけど、今回のはタチが悪過ぎる。 「待って、春楓。証拠がないから明日南に訴えたところでこっちが不利になるだけだよ」 明日南を見つけたらボコボコにしようとしていた俺に、春翔が言った。 「そうだね。恐らく人を使ってやらせたんだと思う。ここは黙ってるしかないよ」 春希も痛そうな顔をしながら言う。 「クソ……っ!!」 やり場のない怒りに、俺は気持ちをどこにぶつけていいか分からなかった。 「……僕で良かったよ。やられたのが春楓だったら僕、例え警察に捕まったとしても明日南の事、どうにかしてたと思うから……」 「同感だね。僕も春楓がやられたら明日南の事、タダじゃ済まさないよ」 「…………」 春希と春翔の静かな怒りの凄まじさに俺はドン引きしてしまって、少し冷静さを取り戻せた。 それから春希はおばさんが迎えに来て、病院に行く為に早退していった。 部活を終えた俺は心配になって春希んちに行ったんだけど、春希は脚に包帯を巻いた痛々しい格好になってて、病院で捻挫と診断された事を教えてくれた。 「ピアノのコンクールまでにはなんとかなると思うけど、その為には合唱コンクールで無理しない方がいいって言われて……」 表情は変えてなかったけど、その声からは悔しさが滲み出ていた。 「……分かった、伴奏は俺が弾くからお前が指揮やって。指揮ならそこまで足に負担かからねぇだろ。親父にはこれから連絡するから、役割は交代するけど明後日は予定通りやる事にしようぜ」 「……うん、そうするしかないね」 明後日はピアノの後、父親に演奏と指揮を見てもらう事になっていた。 明後日までに何とか形にしねぇと。 俺たちは夕飯をそれぞれの家で食べた後、春希んちで練習する事にした。 「春楓、流石だね。何回か弾いただけでもう完璧に弾けるなんて」 「練習で何回も聴いてたからな。春希も結構様になってると思うけど」 「ありがとう。春楓の真似してるだけなんだけどね」 2時間くらい練習すると、俺たちはそれなりの形にはなってきた…と思う。 「春楓、コンクールの曲、ペダル踏まないで指だけ練習してもいいかな」 「おう。……てか、勝負は足が治ってからにすれば良くね?」 「春翔もそう言ってくれたんだけどさ、僕……春楓の事早く抱きたいんだ。だから勝負は予定通りやる事にしてるよ」 ピアノの椅子に座ろうとする春希を手伝って肩を貸していると、春希がそんな事を言い出す。 「僕の指だけで乱れて何回もイッてる春楓が指じゃなくて僕のを挿れたらどんなにいやらしい姿を見せてくれるか早く見たいんだ……」 「な……っ、お前、何言って……」 わざと耳元で囁いて、そのまま耳元にしゃぶりついてくる春希。 「っあ……っ、やめろって……」 ソコが弱いのを知ってて、甘い吐息を吐きながら俺の胸元をまさぐってくる。 春希んちのピアノのある部屋、防音設備もちゃんとしてるし内側から鍵をかけられるからかけてるけど、もしおばさんが来たらと思うと早く止めないとって思っちまう。 でも、それは割と一瞬の事で、俺は春希に与えられる快感に溺れていくんだ。 「んぁ……っ、はるき……」 指先でTシャツ越しに乳首を摘まれると背筋がぞくぞくする。 「言って、春楓。どうして欲しいの?」 春希の声。 いつもと少し違う、低くて甘いその声が身体にズン、って響いて俺をおかしくさせるんだ。 「ち……っ、ちくび……直接触って……」 恥ずかしい事も言えるくらい、俺は春希の声に弱くなっちまってた。 「うん、じゃあ僕に見せてくれるよね?春楓の可愛い乳首」 「うう……っ……」 俺、春希に言われて椅子に座ってる春希の前に立つと、着てるTシャツを捲りあげる。 「あぁ、春楓、僕が触ってない方も勃ってるよ。前まではそんな事なかったのにね」 「あぅ……っ……言うな……そんな事……ッ……」 片方で乳首を指できゅっと摘みながら、もう片方では口に含んで甘噛みしてくる春希。 「ひゃぁ……っ……!!」 その快感にだんだん立っていられなくなってくるけど、春希にもたれたら足に負担がかかるかもって思ってなんとか踏みとどまってた。 「可愛い、春楓。そんなに目を潤ませて必死で立ってるなんて……」 「あぅ……っ……!!」 春希に抱き寄せられ、激しいキスをされる。 「ん……ふ……うぅっ……」 春希が絡めてくる舌が熱く感じて、気持ち良くてたまらない。 時折漏れる春希の声もやらしくて、もっともっとこうしていたくなる。 「春楓、好きだよ。普段のカッコイイ春楓も、可愛くていやらしい春楓も全部大好き」 抱き寄せられて感じた、春希の昂り。 俺、それで更に興奮しちゃって自分の同じモノを服越しだけどソコに擦り付けてしまってた。 「……ふふっ、春楓、僕と一緒にイキたくなっちゃった……?」 「あぁ……ッ、うん、春希と一緒にイキたい……っ」 「嬉しいよ。そんなに可愛く言ってくれるなんて」 「や……はるき……脚……」 俺を軽々と持ち上げて膝に座らせる春希。 「ここは大丈夫そうだよ。……痛くても春楓と気持ち良くなれるなら多少は平気だと思う……」 向かい合うようになると、さっきよりも近くで春希を感じてしまう。 ズボンも下着も脱いで少し離れた場所に追いやると、俺たちは春希のと俺のとを直に触れ合わせた。 「ひ……っあぁっ……!!」 もうぬるぬるになってる春希の先端で全体を撫でられるだけでイッてしまいそうになる。 「春楓は僕の触ってて。僕はこっちでイカせてあげる」 「んぁ……あぁ……あんっ……」 春希の声に導かれてそのガチガチになってるモノを扱いていると、春希の指が俺のナカに挿ってくる。 「春楓、もう僕の指のカタチ覚えちゃったのかな。すぐ飲み込んじゃってるよ?」 可愛い。 って耳元で色っぽく囁かれて、思わず春希の指を締め付けてしまってた。 「……そういう事するから早く抱きたくなるんだよ、春楓」 「うぁ…っあぁぁっ……!!」 春希が大きく息を吐いた後、俺の首筋を甘噛みしながら半ば無理矢理指を増やしてくる。 その太くてゴツゴツした指は俺のイイトコロを抉るように触れてきて、俺はイッてしまってた。 「あっあっ、はるき、俺イッたからもぉやだ……っ!!」 「分かってるよ、そんな事。でも春楓、イッててもこうされるの好きでしょ……?」 「あぁぁぁッ、ちが……っ……」 「違わないよ。こないだ僕がイクまでずっとイキっぱなしだったじゃない」 そう話す春希は俺の恥ずかしい姿を嬉しそうに眺めている。 俺が知らない春希の顔。 眼鏡越しに見えるその目も俺を興奮させて、ますます狂わせていくんだ。 「は……ぁ……っ、はるき……」 「春楓、僕の事好きだよね?」 「あぁっ、すき。春希と気持ちイイ事するの……すき……っ……!!」 「……良かった。僕も大好きだよ、春楓。もっともっと悦ばせてあげるからね……」 あまりの気持ち良さに倒れそうになるけど、春希が俺の身体を支えてくれてた。 春希は俺に自分のイイリズムを刻ませながらイッて、飛び散ったモノを俺に舐めさせる。 それでまた興奮すると、今度は俺に口でするように頼んできて、俺はそんな春希の願いを何の迷いもなく受け入れていた。 春希が2度目の射精を俺の口の中にたくさん出して、エロい事をする時間は終わってた。 満足そうな春希を見て、俺も満足だった。 「大丈夫か?脚」 「ん……大丈夫。それより春楓、ごめん。ちょっと強く噛みすぎちゃって跡付いちゃった」 「はぁ?お前何やってくれてんだよ!」 「ごめん。春楓が可愛い過ぎて抑えが効かなかったみたい」 「みたいじゃねーよ!お前、普段のクールな感じはどうしたんだよ!」 「ごめん……」 全然小さくなってないけど、小さくなって申し訳なさそうな顔をして言う春希。 写メを撮ってもらって確認すると、ワイシャツで隠れるかどうか微妙なところに噛み傷が付いていた。 あんまり痛くなかったけど、これ絶対見られたらヤバいやつだろ。 「……お前にもつけてやる。それでおあいこだ」 「えっ」 「痛くても我慢しろよ」 俺、経験なかったけど、春希にされたみたいにやってみた。 「……っ……!!」 春希の太い首筋の一番血管が浮き出てるところに唇を近づけて噛む……というかきつく吸うと、俺の跡が付く。 「春楓、僕の方が目立つよ!」 「気になるなら絆創膏でも貼ればいいだろ?蚊に刺されたとか言ってさ」 写メを撮って見せたら情けない声を出した春希が昔みたいで可愛くて、つい口が悪くなっちまう俺。 「…いいよ、もう。しばらくこのままで過ごすから」 そんな会話を交わして汚した床とかを片付けた後、春希はコンクールの曲を練習し始めた。 ペダルなしだったけど、俺はその音色に背筋がゾクッとさせられる。 力強いタッチも、強弱の幅も、何より春希の気迫が伝わってきて、これでペダルをつけたらどうなるんだろう、って思うスゲー演奏だったんだ。 ……俺との初Hがかかっててこれだっていうのだけがちょっと恥ずかしいけど。 ****************** 父親との約束の日。 春翔もうちに来てくれて、3人で画面越しだけど父親に会った。 「春希くん、大丈夫かい?ボクも若い頃スキーで失敗して骨折したまま指揮した事あるからなんとかなるとは思うけどね!」 「…ありがとうございます。まだ痛みはありますが頑張ります…」 平然とした様子で答える春希。 昨日、クラスでは春希と俺の交代に一瞬どよめいたけど、春希の指揮がそんなに悪くなかったのと俺が完璧に弾けた事もあって受け入れてもらえてた。 『赤の貴公子さまの方が指揮見やすいわよね!』 『そうね!それに指揮してる時の貴公子さま、本当に素敵……!!』 っていう女の子たちの声があちこちから聞こえてきたけど、誰も春希の首筋の事には触れなかった。 ……たったひとり、春翔を除いては。 『春楓、今すぐ僕にもつけて』 休み時間にトイレまで俺を引っ張っていくと、春翔はそう言って自分の首筋を俺に近づけてきた。 『お前、馬鹿かよ』 『春希だけしてもらってるなんて不公平だよ。いいから早くつけて』 『……しょーがねぇなぁ……』 応えちまう俺もふたりと同じようにイカれてると思ったけど、嬉しそうな春翔を見たらそんな気持ちはすぐにどこかに行っちまってた。 『春楓、僕もつけていいよね』 『はぁ?』 『大丈夫、春希のより綺麗につけてあげるから』 『おい、ちょっ……!!』 そう言って春翔は春希の噛み傷の横、ワイシャツでは隠れるところに跡を付けたんだ。 ……その跡ふたつを隠す為に、今俺はTシャツだと丸見えになるからタンクトップの上に半袖のシャツを羽織って誤魔化していたりする。 「じゃあやってみて」 「はい……」 春希は深呼吸すると手を上げる。 俺は春希と目を見つめあって頷きあうと、伴奏を弾き始めた。 春希、少し緊張してるのか動きが小さい気がする。 そこに春翔の歌声が入ってきて何とか形にはなってたと思うけど、今日の朝練の時の方が良かった気がした。 「うーん、緊張した?ボクの事は気にしないでいいのになぁ。あと、どの箇所も1拍目もう少しハッキリさせた方がいいかな。その方が歌う人も合わせやすいと思うけど」 「は…はぁ…」 父親も俺と同じ事を思ったようだ。 俺、何気に凄くね? 「春希くんはさ、身体が大きいんだからそれを活用しないと!もっと自分は主役感出していいよ!!今のままじゃ春翔くんに負けてるよー」 「…………」 春希が少し俯いて唇を噛み締めたのを、俺は見逃さなかった。 悔しい時に必ずやってる仕草。 親父、春希のココロに火をつけちまったな、絶対。 「……もう一度、お願いいたします!」 春希の目つきが変わる。 相撲の稽古をしてる時みたいな鋭い目。 俺とふたりの時に時折見せる目。 そんな春希と目を合わせた瞬間、俺はすごくドキドキしたんだ。 「…………」 『僕は春翔に負けてないよね?』 春希の目は絶対にそう言ってた。 俺は頷いて、春希の指揮に合わせてピアノを弾き始める。 緊張も解れたのか、春希はさっきとは全然違う指揮で、春翔もさっきより歌いやすそうに見えたけど、春翔のソロのところではふたりが初めて俺の前で揉めた時みたいな、意地と意地のぶつかり合いみたいな空気が漂った気がした。 「ワオ!たった1回でこんなに変わるなんて、やっぱりさっきは緊張してたんだね、春希くん!アメージングだったよ!!」 「…ありがとうございます…」 汗を拭いながら、春希は嬉しそうに言った。 「春翔くん、どうだった?」 「…負けられないですね、春希に」 春翔、絶対何か思うトコが違う。 「そっかぁ、いいね、そういうの!春楓の演奏も少ない時間でよく仕上がってるし、これは本番が楽しみだね!」 俺の父親は気づいていないようで、嬉しそうに笑っていた。 「春楓、明後日の夜には空港に着くからね!お土産たくさん買って帰るから楽しみにしてて!!」 「あ、あぁ、気をつけて……」 来る頃にはこの跡も消えてるといいんだけど。 お互いまだ何か言いたそうにして静かに燃えているふたりをよそに、俺はそんな事を思っていた。

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