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第16話
HARU、爛漫☆第9楽章『なつやすみ』
(青木春翔の場合)
今年の夏休みは昨年と同じようで少し違う。
というのも、今年はずっと夢見ていた、春楓と恋人関係になれたからだ。
春希とふたり、協力しあって春楓とずっと生きていくと決めてから初めての夏休み。
春楓との素敵な思い出が増えたらいいな、なんて思っていたんだ。
******************
「あー、めんどくせぇ。これじゃ夏休みじゃねぇじゃん」
夏休み初日。
春楓がお弁当を広げながらむくれている。
僕らの通う学校は、夏休みの前半は夏期講習があるので実質休みとは言えないものだった。
「春楓は部活もあるから終わるのが少し早いとはいえ大変だよね」
僕はそう言って宥めてみる。
「そうなんだよ、少し早く終わるのは助かるんだけどさ」
「……春楓、今年は夏期講習の間に宿題終わらせようね。僕、始業式の前日に徹夜付き合うの、もう嫌だよ」
「ゔ……っ、わ、分かってるよ!!」
春楓の機嫌が少し直ったところで春希がぼそっと言うと、春楓は凍りつく。
そう、昨年は春楓の宿題が全然終わってなくて夏のお祭りにも行けなかったし始業式の前日は春楓んちで徹夜したんだ。
始業式の日、僕ら3人立ったまま寝てたっけ。
「春希、今年は大丈夫じゃない?僕らが交代で一緒にやってあげればいいんじゃないかな」
僕は浮かんだアイデアをふたりに提案してみる。
春希とどっちが先かで揉めそうだけど、お互い春楓とふたりきりになれるのは絶対に好都合な訳で。
後は春楓のやる気次第だけど、今年は今まで以上に早く終わらせられる気がする。
「……あぁ、それいいね。頑張った春楓にその場でご褒美あげられるしね」
春希の眼鏡がキラリと光る。
絶対Hな事考えたな、春希。
口元だけ笑ってるその顔に、僕はそう予感した。
でも、僕も考えている事は同じだから、あまり強くは言えない。
「春希のご褒美は嫌な予感しかしねぇけど」
「春楓、絶対悦ぶのにそういう事言うんだね……」
「だ……だってそうだろ……?」
春楓に見抜かれても春希は全然動じなくて、逆に周りを気にしてる春楓をドキドキさせていた。
真っ赤になってる春楓、すごく可愛いんだけど、春希がそうさせたんだと思うと悔しくなった。
「止めなよ、春希。春楓が困ってる」
「困ってる?そうかな……」
止めようとすると、春希が僕に何か言いたげな顔をしてこちらを見る。
『春翔だって同じ事考えてるよね?』
と言われてる気がしてならなかった。
「もーいいから!お前ら、早く終わらせて祭りに行ければいいんだろ?」
春楓が僕たちが喧嘩する前にそれを回避してくれる。
「まぁ……そういう事にしておこうか。春翔、僕らも頑張って早く終わらせよう」
「うん、そうだね……」
これ以上揉めたら春楓に怒られて一緒に過ごせなくなるかもしれない。
春希も僕もそれを感じて、春楓の言葉に同意していた。
******************
今日はピアノのレッスンの日だったから、僕らは学校の鞄に楽譜を入れて登校していた。
講習が終わり、駅に向かいながらスマホで時間を確認すると1時間くらい時間に余裕がある。
「時間、少しだけ空いてるな」
「そういえば、最近駅に誰でも弾いていいっていうピアノ置いてるらしいよね。先生の所に行く前にそこで指慣らししていく?」
今朝のニュースでやっていた話をふと思い出した僕はふたりに提案していた。
先生の教室がある駅に置かれたグランドピアノ。
小さい子からプロ並みに上手い人まで誰でも弾いていいって事になってるから、すごく上手い人の時には人だかりもできると紹介されていた。
「へぇ、面白そうじゃん。行くなら3人で弾こうぜ」
春楓がすぐにのってくれる。
「そうだね。でも、何の曲にする?」
春希も満更でもない様子だ。
「こないだの合唱の曲は?春翔が主旋律弾いて俺ら伴奏で」
「春楓、それすごく楽しそうだね!!」
春希と春楓が話しているところに僕が入って春楓の意見に賛同する。
「春希、低音の伴奏だけって弾ける?」
「大丈夫だと思う」
「よしっ!じゃあ決まり!!駅に着いたら3人で合わせようぜ!!」
嬉しそうな春楓の顔に、僕も笑顔になる。
春楓の笑顔は僕にとって太陽そのものだ。
いつ見ても大好きっていう気持ちが溢れてくるその笑顔に、僕は心が満たされていくのを感じていた。
駅に着いてピアノを見つけると、僕らはイスがひとつしかなかったので3人で立って演奏する事にした。
吹き抜けの広場みたいなところにあるグランドピアノ。
春楓と春希の伴奏に合わせて、僕が中央で主旋律とコーラスの音を弾く。
余裕があったので歌を歌うと、春楓と春希も一緒にハモってくれた。
昔はなかなか揃えて弾く事が難しかったけど、今はこうして弾き語りが出来るようになってすごく楽しい。
「げっ、何だこの人の数」
「ホントだね、全然気づかなかった」
演奏を終えたら周りには沢山の人がいて、拍手を送ってくれた。
アンコールの声まで聞こえてきて、僕たちはどうするべきかと話し合う。
「時間的にはいけるけど、何にする?」
「ん〜…あ、お前らあれまだ弾ける?昨年のクリスマス会で弾いたやつ」
春楓が名案を出してくれる。
僕たちの通うピアノ教室は、発表会の他に毎年12月にホールを貸し切って教室独自のクリスマス会があって、昨年は3人で映画の曲を弾き語りしていた。
あの時もすごく楽しかったな。
「僕は大丈夫だよ」
「僕も」
僕が応えると、春希もすぐに応えてくる。
「んじゃ、それでやろうぜ」
「「うん」」
僕たちは弾く場所を変えると、演奏を始めた。
元々は女声のコーラスの曲。
最初は春楓が真ん中で伴奏を弾いて、僕と春楓が歌い始めてから春希がコーラスとして入ってくる。
ワンフレーズが終わると、主旋律を春楓、低音部を僕、高音部を春希がテンポを早めて3人で弾きながら歌って、たまに無伴奏にしたり聴いてる人たちに向かって僕が一緒に手拍子をするようにウインクしながらジェスチャーしたりして。
そうすると手拍子が入ってきて、すごく盛り上がった。
ずっと楽しい気持ちで演奏してたらあっという間に終わってて、さっきよりも沢山の大きな拍手をしてもらえたんだ。
******************
駅での演奏の後、ピアノのレッスンを経て僕は家に寄って着替えを持つと春楓の家にお邪魔していた。
今日は春希がレッスン後に家の手伝いをする事になり、うちの母親は夜勤で不在。
それで春楓が家に泊まっていけば?って誘ってくれたんだ。
おばさんも歓迎してくれて、僕は作っていただいたカレーライスを春楓と食べてから夏休みの課題をする事にした。
「春翔〜、このページで今日はもう止めたい」
「ダメだよ、春楓。あと2ページは頑張らないと」
「マジかよぉ……」
英語の問題集に頭を抱えている春楓。
そこまで苦手じゃないのに、やる気がないせいでなかなか目標のページまで終わらない。
「春楓、早く終わらせて発表会の楽譜、一緒に見ようよ」
「お!そうだった!とっとと終わらせねぇとな!」
僕がそう言うと、春楓の目の色が変わる。
駅での演奏の余韻から、僕らは今年の発表会を3人での演奏にしたいっていう話を先生にしていた。
そしたら先生が少し前にインターネットで火がついて人気が出た曲を3人でやれはカッコイイんじゃないか?って言って楽譜を渡してくれて。
春楓の好きなテンポの早い曲だから、春楓は楽譜をちょっと見ただけでテンションが上がって、それがすごく可愛かった。
その曲を鼻歌で歌いながら一生懸命問題を解いていく春楓。
ノートを押さえてるその指にネックレスから外した僕とのペアリングを嵌めてくれて、すごく嬉しくてたまらない。
「ん?春翔、どうしたんだよ?俺の事じっと見て」
「春楓が指輪してくれてるのが嬉しくて」
「そ、そっか。飯もシャワーも終わらせたし、母さんがレッスンの間ならいいかと思ってさ」
おばさんの手前、一緒にシャワーには入れなかったけど、僕は照れくさそうにしながら話してくれる春楓を見てすごく幸せな気持ちになった。
「ありがとう、春楓。大好きだよ」
その指に触れた後、僕は春楓にキスをした。
小さい頃から何度でも言ってしまう『大好き』の言葉。
春楓、嫌じゃないのかなってたまに思うけど、春楓は絶対に嫌な顔をしないし、あの太陽みたいな笑顔で受け止めてくれるんだ。
「おう」
今日もまた笑ってくれて、でも少し照れてる感じの顔で。
恋人関係になってから見せてくれる春楓のそんな顔が可愛くて、僕はますます春楓に惹かれていた。
予定よりも少し多めに問題集を終わらせると、僕は春楓と楽譜を見ていた。
「あ〜!!早く弾きてぇ!絶対楽しいじゃん、この曲!!」
「うん、そうだね」
春楓のベッドに寄りかかりながら、肩を寄せ合って楽譜を見る。
今回は春楓が主旋律、低音部が春希、高音部が僕の担当になっていた。
「ここのさ、春翔と重なりながら弾くところとか難しそうだけど出来たらカッコイイよな!!」
「うん、こういう弾き方多分初めてだよね?すごく楽しそう……」
「あー!!ピアノ触りてぇ!!母さんのレッスン終わったら弾かせてもらおうぜ」
春楓はその大きな瞳をワクワクでいっぱいにして、きらきら輝かせている。
そんな春楓が可愛くて、愛おしい。
「……ね、春楓……」
黒のタンクトップに白のショートパンツ姿の春楓に魅了されていた僕は、春楓の可愛い顔に抑え込んでいた感情をさらけ出してしまう。
「…僕は…ピアノの前に春楓の身体を触りたいな…」
「は、春翔……」
少し日に焼けた顔を撫でて、そのまま首筋に指を移動させると、春楓がびくん、と身体を震わせた。
「や……ちょっ……あぁ……っ……!!」
首筋にキスをしながら胸元に触れると、可愛い声を上げながらもっと身体を震わせてくれる春楓。
「おばさんに見つかったら困るから、静かにしようね……」
「う……うん……っんん……ぅ」
抱き寄せて耳元で囁くと、春楓は顔を真っ赤しながら頷いて僕にキスしてくれる。
僕の背中に手を伸ばしてくれて、ぴちゃぴちゃと音が出るくらい舌を絡ませてきてくれる春楓に、僕は身体がどんどん熱くなっていくのを感じた。
「春楓……」
その首筋の少し下、制服のシャツで隠れるくらいの位置に僕の証をつけると、僕は着ていたTシャツを脱いでいた。
「僕にもつけて」
「う……ん……っ……!!」
さっきまできらきらしていた大きな瞳はすっかり蕩けてしまい、それはそれで可愛くて大好きだった。
春楓もタンクトップを脱ぐと、僕と肌を合わせるように僕の胸の上に春楓の証をつけてくれる。
「お前の白い肌にこういうのつけるの、もったいないっていっつも思う……」
そう言って、春楓は僕の胸に顔を寄せた。
「もったいなくないよ。僕が望んでる事なんだからそんな風に思わないで」
ロシア人クオーターの僕は肌の色が白くて、日焼けもほとんどしない。
それに加えて伯父に似た日本人離れしたくっきりとした目鼻立ちと焦茶色のうねりの強い髪は、幼稚部の時に皆と違う存在としてからかわれて、それを助けてくれたのが春楓だった。
皆と違う僕を、春楓は関係なく受け入れてくれた。
太陽みたいな笑顔で包んでくれた。
あの時、僕には春楓しかいないって思った。
それからずっと、僕には春楓しか見えないんだ。
「僕の全ては春楓のものだよ。身体も心も全部、春楓のものだから……」
気持ちが高ぶって、思わず春楓をきつく抱きしめてしまう。
「っ、春翔苦しいって」
「あっ、ごめん、春楓」
「……どうせまた余計な事考えたんだろ」
上目遣いで僕を見ると、春楓は僕の頭をポンポンと優しく叩く。
「春楓にはすぐ見抜かれちゃうね」
「俺を誰だと思ってんだよ」
「ん……」
そう言って春楓はまたキスしてくれた。
けど、唇が離れた瞬間のその顔が何だか苦しそうに見えて、僕は春楓を抱きしめていた。
「春楓、何か悩んでるの?」
「ん……まぁ……ちょっとだけ」
僕には思い当たる節がひとつだけあった。
「やっぱり明日南に何か言われたんでしょ?」
思わずその事を問いただしてしまう。
「……なぁ、春翔、俺がお前らを狂わせたんだとしたら、俺はこれからどうしていけばいいのかな…」
春楓は観念した様子で話してくれた。
「春楓、僕らが君に心を奪われた事を狂わされたと表現するのなら、それは春楓も同じじゃない?僕らの想いに応えてくれて、身体の関係も許してくれて、普通ならそんな関係にならないはずなのにそうなったっていう事は、春楓も僕らに狂わされたんだよ。お互いにそれでいいって思ってるんだから、関係ない明日南がどうこう言う話じゃない」
「そうだよな。俺らの間で問題がないなら言われる筋合ねぇよな……」
僕の言葉に、春楓の表情が少し柔らかくなる。
「おじさんの前で約束したでしょ?3人でずっと一緒に生きていくって。春楓は僕と春希の事、今まで通り守っていてくれてればそれでいいんだよ」
春楓にそう言って、僕はキスしながらその身体を床に倒していた。
「春楓が余計な事で悩まないようにしてあげる」
「や……春翔……っ!!」
普段は絶対しないのに、僕は春楓の乳首を少し噛むように愛撫していた。
春楓に他の人の事を考えて欲しくなくて、今、目の前にいる僕だけを見て欲しくて。
あぁ、これじゃ春希と同じケモノじゃないか。
でも、胸の中でグツグツしている衝動を止める事が出来なかったんだ。
「春楓のココ、前より大きくなってHなカタチになったよね。僕らがたくさん弄ってるからかな……」
「あぅ……んんっ……!!」
既にぷっくりと頭をもたげている乳首を指でギュッと摘みながら扱くようにすると、春楓が真っ赤になりながら自分の手を口元に当てて声を出さないようにした。
潤んだ瞳からは涙が浮かんできていて、すごく可愛かった。
「そんなに気持ちいい…?痛くないの……?」
「っあ……ッ、気持ちいい……っ……!」
春楓が身体を震わせながら言う。
少し力を入れてしまってるのに、春楓はそれがいいみたいだ。
「……もっと気持ちよくしてあげるね、春楓……」
片手でその行為を続けながら春楓が履いているショートパンツを下着ごと脱がせると、既に勃ち上がって堅くなってる春楓のを口に含む。
「ふぁ……っ、ダメっ、はると、イクっ、イッちゃう……ッ!!」
口で何度か扱くようにすると、春楓は堪えられなかったのか僕の口の中で達してくれた。
僕はそれを飲み干すと、春楓と繋がるために自分の指を濡らしてその部分に触れる。
汗なのか、それとも更なる快感を求めているのか、ソコは既に湿って柔らかくなっていて、僕の指をすんなりと受け入れてくれた。
「ひぁ……あぅ……んんっ……!」
「すごいね、春楓。すぐ2本入っちゃったよ。中も濡れててすぐにでもひとつになれちゃいそう……」
口を押さえている春楓の耳元で囁きながら、僕は春楓の弱いトコロに触れた。
「はぅ……ッ……!」
春楓は目を見開き、物欲しそうに僕の指を締め付けてくる。
「うぅ……っ、うぅぅ……ッ……!!」
ソコを何度も刺激すると、春楓は口に指を入れて必死に声を殺そうとした。
そうしながらも時折いやらしく腰を動かしている姿を見つけた僕は、指を引き抜いて下に身につけていた衣類を脱ぐと準備万端になっていたモノを指の代わりに挿れた。
「うぅぅぅ……っ!!!」
「はぁ……っ、春楓、すぐ全部挿っちゃったよ。僕のカタチ、覚えてくれてるのかな……」
先端から根元まで、春楓はすんなりと僕を受け入れてくれた。
ぐいぐいと痛いくらいに締め付けられて、僕は動かずにはいられなくなる。
春楓の乳首を弄っていた手を離すと、春楓を抱きしめながら激しく腰を揺すり、その快感に酔いしれていた。
「んは……ぁん……は……はると……」
咥えていた指を外すと、春楓がキスをねだってくる。
「春楓……」
僕はそれに応えて、腰を動かしながら春楓と舌を絡ませ合うキスをして、そのまま春楓の中で達していた……。
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エアコンの風が届きやすい場所で、僕らは後始末をしてもそのまま裸で床に寝転んでいた。
「ごめんね、春楓。今日すごく乱暴にしちゃって……」
春楓に寄り添うと、僕はその身体を抱きしめていた。
「え?そう?まぁ……春翔の普段の時よりはそうだったかもしれねぇけど……」
恥ずかしそうに話す春楓。
「春翔、俺、女の子じゃねぇから多少の事なら大丈夫だぜ?だから気にすんなよ」
「春楓……ありがとう。大好き…」
そんな春楓が可愛くて、僕はまた大好きの言葉を言ってしまっていた。
「…あ、母さんもうすぐレッスン終わるな。春翔、着替えてすぐ行けるようにしようぜ」
「うん、そうしよ」
笑顔を交わすと、僕らは指輪をネックレスに繋げてから服を着て、おばさんのレッスンが終わるとピアノの練習を始めて、それから甘い夜を過ごしてから眠りに就いた。
夏休み早々にこんなに幸せな時間を過ごせて、僕はこの先も同じような時間が訪れるんだろうなって確信したんだ。
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