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第17話
HARU、爛漫☆第9楽章『なつやすみ』
(赤木春希の場合)
春楓に想いを伝えられて、受け入れてもらえてから初めて迎える夏休み。
僕の家は1年で1番忙しい時期で、本場所が終わってすぐ地元での巡業に備えて春翔にも声をかけ、中等部の頃から手伝いに追われていた。
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「今年もよろしくね、春翔」
「うん、大した事は出来ないけど」
「大丈夫だよ、それは僕も同じだから」
僕らのお手伝いは父親の支援者のお宅と宿舎の掃除、洗濯、料理とその後片付けの手伝いだった。
「おー!!春希も春翔もまたデカくなったな」
力士の人たちが泊まる大部屋の掃除をしていると、持ち主の大塚さんから声をかけられる。
「確かに去年より3センチ伸びましたね。春希は?」
「僕は2センチかな」
「春希、ますます親方に似てきたな。でもお前、相撲取りやる気ないんだろ?」
大塚さんはニコニコしながら僕の身体を触ってくる。
「……はい……」
「いい身体になってきたのにもったいないねぇなぁ!ま、親方もお前には好きな事やらせたいって言ってたしな」
「はぁ……」
基本的に話す事は苦手だ。
まして、父親の知り合いともなれば余計にそうだった。
それなのに僕は、父親が有名人だという事で小さい頃から何かとテレビや雑誌に出たりする事が多々あった。
この忙しい時に先日のピアノコンクールの表彰式の取材も入っていて、この後その打ち合わせとかで女の人と話をしなければいけなくて、はっきり言って面倒くさい。
……まぁ、その人が家に来てくれるっていうから春楓にお願いして同席してもらう事にしてるんだけど。
あぁ、早く春楓に会いたいな。
春楓、きっとシャワーに入ってから来るだろうから、髪の毛が少し濡れてたりして、それはそれで可愛いんだろうな。
女の人が帰ったら、どうにかして家に泊められないかな。
夏休みの宿題やるのと、ピアノの練習するからって言えばどうにかなりそうだと思うんだけど。
そんな事を考えながら、僕は掃除をこなしていた。
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僕の取材には両親も出るらしく、大塚さんのお宅から家族全員で帰宅し、お土産に頂いたお寿司を3人で食べてからシャワーに入っていた。
僕は1番先に入れてもらい、女の人が来るからちゃんとした服装にしなさいと母親に言われて暑いのにTシャツの上に薄手のジャケットを羽織るように言われ、下はコットンパンツを履いていた。
汗をかきやすい僕にとって、クーラーがついているとはいえ暑苦しい事この上なかった。
「あ、こら春希!もうすぐ来られるんだからジャケット着てなさい!!」
「インターホン鳴ったら着るよ」
耐えられなくて、ジャケットを脱いでクーラーの下でスマホに収めた春楓の可愛い写真を見ようとすると、インターホンが鳴る。
「ほら、春希!!」
「……はぁ……」
あぁ、本当に面倒くさい。
僕はため息をつくとジャケットを羽織って玄関に向かった。
「はい」
「おう!早見さんまだ来てなかった?」
「春楓ぁ!!」
ドアを開けると、Tシャツとハーフパンツ姿でリュックを背負ってる、春楓が立っていた。
僕は嬉しくて、嬉しすぎて春楓に抱きついてしまう。
「春希、外で抱き合うのはあっちぃって!!」
「あっ、そうだね、ごめん……」
春楓に言われて泣く泣くその身体から離れる。
少し濡れた髪。
シャンプーの香りだけじゃない、春楓自身のいい匂いが鼻をかすめた。
あぁ、今すぐ春楓に触れたい。
お互い生まれたままの姿になって、僕の身体で春楓を悦ばせてあげたい。
春楓の匂いに触れて、僕の中でその欲求が心の中に広がっていった。
「こんばんは!」
「あら、春楓。ごめんね、部活で疲れてるのにうちの春希のワガママに付き合ってもらって」
「全然。こんなの昔からよくあった事だし」
家に入ると、春楓は母親と談笑し始める。
僕はソファに座った春楓の隣に座り、その愛おしい横顔を一瞥した。
「身体ばっかり大きくなってねぇ…。中身はずっと怖がりなの、いい加減治らないのかしら。このままじゃずっと春楓に面倒見てもらわなきゃダメなんじゃないかって心配になるわ」
「ハハッ、さすがにそれはねぇだろ……」
春楓が母親の言葉を笑いながら否定する。
それが嘘だという事はちゃんと分かっているから、僕は聞き流していた。
そこにインターホンの音が鳴り、僕は暑苦しいのを我慢してジャケットを羽織ると再び下に降りた。
「こんばんはー!今日はよろしくね!!」
「…はい、よろしくお願いいたします…」
女の人は笑顔で僕を見ていたけど、僕にはどうでもいい事だった。
「春希くん、相変わらずイケメンね。彼女ちゃんがうらやましいわ」
「……ありがとうございます」
そう言われても何も嬉しくない。
自分をかっこいいって思った事なんて1度だってないし。
父親のように見た目と中身が釣り合ってるならまだしも、僕はそうじゃない。
このどこも無駄に大きくなっている身体が未だに恥ずかしいとさえ思う。
けど、春楓はそんな僕の身体をかっこいいと思ってくれていて、悦んでくれるから、春楓にそう思われるのはすごく嬉しいし、誇らしい気持ちになるんだ。
女の人を居間に案内すると、シャワーから出たのか、僕同様に身なりを整えさせられ僕と同じような格好になった父親がいた。
「初めまして!今回お世話になります……」
女の人が自己紹介をしながら父親に名刺を渡し、今回の取材の趣旨を説明し始める。
「この度、春希さんの成長を紹介させて頂きたく……」
どうやら、僕はテレビでは横綱だった父親のひとり息子として父親とは別の人生を歩もうとしているという事で紹介されるらしい。
「へぇ、面白そうじゃねぇか。母ちゃん、いいよな?取材受けても」
「あんたと春希がいいなら私は言う事ないわよ」
両親は僕の気持ちに関係なく、僕がテレビに出て、世間の人たちに注目される事が嬉しいらしい。
そんな訳で取材はこのまま続く事になり、表彰式の他に近いうちに僕の日常……家の手伝いをしている僕の様子を撮影したり、両親にインタビューしたりもするらしい。
「春翔も手伝いに来てるから、あいつを映さないようにだけしてくれよ」
「承知しております。春翔くん、もったいないですよね、あれだけの美貌の持ち主、なかなかいないのに……」
「あいつんちは複雑な家庭なんだ。そっとしておいてくれないか」
「そうですか……」
父親が少しきつい口調で言う。
小さい頃はよく分からなかった春翔の家の事情。
僕的にはそんな事はどうでもよくて、春翔が春楓をどんな目で見ているのかという事だけが気になっていた。
「春楓くんは協力してくれるわよね?仲良しのお友達として春希くんの事、ちょっとだけインタビューさせて欲しいのと出来れば一緒に連弾して欲しいんだけど」
「いいっすよ!連弾は多分少し練習したら大丈夫だと思いますし、インタビューの内容を事前に教えてくれたら春希とコメント考えるんで。いいよな?春希」
「うん……」
女の人が春楓の方を見て言うと、春楓は僕の顔を見て笑いながら答えた。
春楓のこの顔、僕と連弾するのを楽しみにしてる顔だ。
そんな顔をしている春楓がすごく可愛くて思わず抱きしめたくなったけど、今は我慢しないと。
「お姉さん、こいつらは昔、連弾して話題になってテレビに出た事あるんだぜ?母ちゃん、あのDVDどこだ?」
「はいはい、ちょっと待ってて」
頼まれてもいないのに僕らの昔の映像を見つけて流す両親。
女の人もちょっと驚いているようだ。
そして、その驚きは、そのDVDを観て更なるものになったようだった。
「えぇぇっ!?すごい、ふたりとも小学生でこんなに上手だなんて!!」
「はははは、だろ?こいつらこれで注目されたんだ」
嬉しそうな父親。
「はい、これがその時のふたりの写真よ」
すかさず女の人に当時の僕と春楓の写真を見せてくる母親。
「わぁ!!春希くん、小学生の頃は小柄で可愛かったんですね!」
食いついてくる女の人。
そこには今より40センチは小さい僕が、春楓と頬をくっつけて笑顔で肩を抱き合い、ふたりで花束を持っている写真があった。
「春楓は変わんねーな」
「おじさん、気にしてんだからそれ言うなよ!!」
「あぁ、悪ぃ悪ぃ」
豪快に笑っている父親は、悪いなんて全く思っていないだろう。
春楓は気にしているみたいだけど。
******************
女の人は両親の親馬鹿ぶりに散々付き合わされた後、今後のスケジュールの話をして家を出ていた。
暑苦しさと禁欲からようやく解放された僕は、ジャケットを洗濯カゴに放り投げると春楓を連れてピアノの部屋まで来ていた。
「春楓と勉強するから」
と両親には言ったけど、春楓とひとつになるのが先だ。
「……お前、この部屋に来たって事は絶対勉強する気ねぇだろ」
「ダメなの?僕、ずっと我慢してたんだよ」
まずは抱きしめて春楓のいい匂いを思いきり吸い込む。
あぁ、やっとこうする事が出来た。
もう……我慢出来ない。
「や……はる……んんっ……」
床にその身体をキスをしながら倒す。
唇を舌で撫でると春楓もそうしてくれるから、僕はますます興奮してしまい、その可愛らしい舌を吸ったりした。
「……春楓だって僕と勉強するよりセックスする方が好きでしょ……?」
唇を離すと、春楓のハーフパンツと下着を脱がせて両脚の間に顔を埋める。
大股のあまり日焼けしていないところをきつく吸って僕の跡を残すと、春楓に痛がられた。
「おまっ、何でそんなに力入れるんだよ」
「ごめん……そんなつもりはなかったんだけど……」
「…ま、いいけどさ、怪我した訳じゃねぇし」
どうやら僕は跡をつける時の力が強いらしい。
力加減、難しいな。
でも、くっきり跡残ってしばらく消えないし、春楓も止めろって言ってないからいいのかな。
「ごめんね、春楓。ココはちゃんと痛くないようにするから……」
そう言って、僕は春楓の大股の先にある蕾に舌を這わせる。
「あぁ……ッ、した……はいってる……っ……!!」
柔らかいソコに舌の先端が触れると、春楓が身体をびくびくと震わせた。
春楓が僕にいやらしい姿を見せてくれる瞬間。
この瞬間がすごく好きで、ものすごくゾクゾクするんだ。
「はぁ……あぁっ、はるき……!」
濡れた蕾に僕は自分の指を挿入する。
春楓の身体を抱きしめながらそうすると、春楓が身体を震わせたまま僕の名前を呼んで抱きしめ返してくれた。
僕を求めてくれてる。
そう思うと嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「はぁ……ッ、も……挿れて……」
指が動く度に液体の滴る音が大きくなってはっきり聞こえてくると、春楓が僕にねだってくれる。
「うん……」
僕は楽譜の棚の裏に隠しているコンドームの入った箱を取ってくると、ベルトを外してチャックを下ろし、春楓のいやらしい姿で勃起した陰茎にそれを装着してから春楓とひとつになった。
「うぅ……っ、腹ん中……春希のでいっぱいであつい……!!」
「……っ、春楓の中、すごく熱いよ……」
僕を包み込んで、いやらしい顔を見せてくれる春楓。
僕はそんな春楓の顔を眺めながら、暑さでTシャツが邪魔くさくて春楓と繋がったままその辺に脱ぎ捨てる。
「春希……めちゃくちゃ汗かいてんじゃん……」
そう言いながら春楓も同じようにTシャツを脱いでくれて、僕の胸に触れてくれる。
必要以上に筋肉のない、春楓の綺麗な身体。
その胸元にはネックレスで通した春翔からのプレゼントの指輪の他に気になるアクセントがあった。
「や……んん……ッ!!」
春翔がつけたであろうその跡の傍に、僕も同じように跡を残すと、春楓は僕をぎゅっと締め付けてきた。
「春楓って少し痛いくらいが好きだよね……っ……!!」
「ひゃ……あぅ……ッ……!!」
耳元でそう言ってそこを甘噛みすると、春楓は声を上げながら更に僕を締め付ける。
もっと僕を感じて欲しくて、春楓の脚を持ち上げると奥深いところまで挿入して春楓の弱い所を刺激した。
「あっあっ、はるき、ダメ、ソコやだ……ッ……!」
「違うよ、春楓。ココ、好きなトコロだよね?」
「あ……ひゃぁっ……あぁぁ……っ!!」
ぐぷ、ぐぷ、といういやらしい音を響かせながら、春楓は触れてもいないのにイッてしまい、そのまま精液を吐き出し続けていた。
良かった、今日も春楓に満足してもらえたんだ。
春楓の射精に安堵した僕は、その後すぐにコンドーム越しではあるけれど、春楓の中でイッていた。
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「さ、勉強頑張ろう、春楓」
すっきりした僕は後始末を済ませると、春楓を抱っこして部屋に向かっていた。
「お前、何でそんなすぐ切り替え出来るんだよ」
「ん?だって勉強終わったらピアノの練習して寝る前にセックスするつもりだから」
ベッドに春楓を降ろすと、まだ目が潤んでいる春楓がこう聞いてきて、僕は着替えを探しながら答えた。
「はぁ!?それ、俺に今日泊まれって事?」
「うん、そうだよ。いいよね?明日は学校ないし」
「俺、明日部活なんだけど!それにお前だって稽古や親父さんの手伝いあるだろうが」
「そっか……じゃあ1回だけならいいでしょ?」
タオルで汗を拭いた後、服を着る前に春楓に抱きついてお願いする。
「お前、狡い……」
そう言って、春楓は1回だけならって言ってくれて僕の胸に顔を寄せてくれた。
「ありがとう、春楓」
そんな春楓が可愛くて、愛おしくて、その顎を持ち上げるとキスしていた。
「いいから服着ろ!てかさっきまで着てた服、大丈夫なのかよ」
「あ、うん、洗濯カゴ入れる前に洗って脱水してから入れる事にするよ」
見た感じ精液がついてそうな感じはなかったけど、汗で変に湿ってはいた。
「ならいいんだけど。俺、お前と今まで通り会えなくなるの、嫌だから……」
「春楓……」
真っ赤になって話してくれる春楓。
どうして、こんなにも僕の心を乱して、捕まえて離さないような事ばかりしてくるんだろう。
「お前、周り見えてなさすぎなところあるからハラハラするんだよ」
また春楓が欲しくなり、腰かけていたその身体をベッドに倒そうとした僕を、春楓が止めてくる。
「ホラ、とっとと勉強終わらせようぜ。俺、母さんに連絡しとくから」
「うん……!!」
その後、ちゃんと勉強して、一緒にピアノの練習も楽しくしたけれど、僕は1度という事で許してもらったのに何度も春楓を抱いてしまって春楓に怒られていた。
******************
学校と家の手伝いと取材で慌ただしく過ぎていく夏休み。
表彰式も春楓が部活で来られなかったけど無事に終わって、取材は春楓との連弾と春楓のインタビューだけになり、インタビューの内容も別の日に春楓と話し合って決めていた。
「じゃあ撮影するのでお願いしまーす!!」
「はーい!」
僕らは春楓のおばさんとうちの母親が選んで買ってきたお揃いの服を着てピアノの前に座っていた。
上は白いTシャツの上に黒いサマーカーディガンで下は濃紺のジーンズ。
カーディガンが暑苦しいし、ジーンズも丈が短かったら良かったのにと思うんだけど、テレビに映るのに軽装は良くないとかでこの服装らしい。
春楓と私服でお揃いなんていつ振りだろう。
でも、僕と春楓、同じ服を着ているように見えないのは気のせいだろうか。
春楓はすごく似合っててすごくおしゃれで可愛く見えるけど、僕はTシャツもカーディガンもきつくて、無理矢理着てるように見えてるんじゃないかと不安だ。
「…………」
今までそうだったように、僕は弾く前に春楓の手を握っていた。
春楓はそんな僕を見て笑ってくれて、その手を強く握り返してくれて、僕を安心させてくれる。
僕が先に弾き始めて、今回は途中でお互いの場所を交代して弾いたり、お互いの手が交差するように弾いたり、小学生の時とは違う弾き方に挑戦していた。
弾いている間の春楓はずっと楽しそうで、僕もすごく楽しい気持ちになる。
春楓だけが弾いてから場所を交代するところで、暑さに耐えられなかった僕はカーディガンを脱ぎ捨てていた。
あっという間に終わってしまった春楓との連弾。
お互いにミスなく弾き終えた後、僕らはハイタッチを交わし、聴いていた女の人とうちの両親は拍手をしてくれた。
「すごい!!小学生の時の演奏よりパワーアップして本当にすごかったわ!!」
「ありがとうございます!楽しかったな、春希!!」
「うん」
春楓も暑かったのか、少し汗をかいているように見える。
満面の笑顔が可愛くて、僕もつられて笑っていた。
「春希!せっかくいい演奏だったのに何なの途中で服脱いで!早く着なさい、だらしないわよ!!」
汗を用意していたタオルで拭っていると、母親に言われる。
「分かったよ……」
カーディガンを拾いに行くその瞬間、春楓が頬を少し赤らめて僕を見ているのに気づいた。
春楓、汗をかいてる僕を見て欲情してくれたんだよね。
僕に抱かれたいって事だよね。
今日、この後絶対春楓とひとつになろう。
…とりあえず今は我慢してインタビューを乗り切らないと。
僕はカーディガンを羽織り、自分の中に沸き立つ欲求を何とか抑えていた。
インタビューはこのままピアノの部屋で並んで座った状態でやる事になっていて、両親たちが退出すると早速始められた。
「春楓くん、春希くんの第一印象って覚えてる?」
「うーん、気が小さくて泣き虫、かな」
「小さい頃のものではっきり覚えてる思い出はある?」
「えーと…うちと春希んちで遊園地に行って迷子になった時の事とか……」
ピアノの時にはほとんど緊張した様子を見せない春楓だけど、インタビューの時には少しだけ緊張している様子で僕と事前に決めた内容を話している。
「本当に仲良しなのね、ふたりは。なんだか恋人同士みたいね」
「えっ、マジすか?俺、春希が女なら付き合わないと思いますよ。自分よりデカい女の子はちょっと……」
女の人が予定していないような話をする。
春楓は驚いた顔をしながらも、不自然にならないように話してくれた。
「春希くんは?」
「僕は……」
どう返そうかな。
春楓が否定しているから、僕が反対の事を話してもいいかな。
「春楓が女の子だったら、結婚したいです。僕の事よく知ってて支えてくれるし、料理も上手だし。僕、こういう性格なので引っ張ってくれる人が合ってると思うので……」
「おっ、おいっ、やめろよ気持ち悪い!」
春楓は一瞬動揺した様子を見せたけど、笑顔で僕を小突いてきた。
そこで撮影は終わって、女の人がお疲れ様と声をかけてくれる。
「ふたりって本当に仲良しよね。春希くんの彼女ちゃん、焼きもち妬いたりしないの?」
「あぁ、諦めてるんだと思いますよ。それに春楓とも仲良いので僕の事で相談する事もあるみたいです」
女の人に聞かれ、僕は適当な事を言った。
「あらっ、そうなの?春楓くん、どんな事相談されるの?」
「えっ、えーと…あ、でも春希いるのに言ったら俺、春希の彼女に怒られるんで言えません」
春楓も上手く話を合わせてくれる。
「春楓、後で詳しく聞かせてね」
僕との連弾の間、どんな事を考えたのか。
僕はそんな事を考えながら春楓を見て少しだけ笑顔を見せた。
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