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第22話
HARU、爛漫☆第11楽章『初めてのライバル出現!?』
学祭も無事終わり、春希と春翔は劇の影響もあってますます人気者になっていた。
下級生のファンが増えたみたいで、休み時間の教室前の廊下には春希か春翔を見に女の子たちが殺到してた。
「大人気だな、ふたりとも」
「僕らの事騒いでも何も出ないのにね」
クラスの女の子たちがガード?してるのもあって俺たちはそれを遠巻きに見てる感じだ。
でも、春翔は覗きに来てる女の子たちに笑顔で手を振ったりしてた。
「春翔、そうやって愛想振りまくの止めてよ。ますます来るじゃないか」
「春希が無愛想な分、僕が対応してあげてるのにそういう事言うの?」
「僕、興味ない人に愛想振りまくなんて無理だから」
そう言いながら春希はメガネを拭く。
学祭の間は少し長くしていた髪をまた元通り短くした春希。
あれはあれでカッコよかったと思うんだけど、親父さんから男なら短くなきゃダメだとか言われて床屋に連れていかれたんだよな。
「結局、僕らは隠れて生きていくしかないんだから少しでも気づかれないようにしないとダメだと僕は思うんだ」
「……そうだけど、春翔はやり過ぎだよ」
「…………」
その言葉に胸がチクッと痛む。
学祭の後、母親たちがうちに集まって春希と春翔も一緒に春翔のおばさんが撮影してくれてた劇の上映会をやってたんだけど、その時俺たちの関係に気づく事もなければ春翔たちの言動も演技に入りすぎって言って全然何とも思ってなさそうだった。
俺たちは変な期待をした事を反省して、とりあえず大人になって自立するまでは今まで通り仲良しの幼馴染を演じる事に決めたんだ。
「春楓?顔色悪いけど大丈夫?」
思い出した顔が具合悪そうに見えたのか、春翔が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「あ、あぁ、大丈夫……」
「次の時間自習だし、保健室行って休んだ方がいいよ。僕が連れてってあげる」
「え……ちょっ……春希!!」
春希は俺を軽々と抱き上げると、女の子たちの前を通り、下級生たちの前も平然と通って保健室まですたすた歩いていく。
俺をいわゆるお姫様抱っこしてる春希に、女の子たちは歓声を上げ、俺は羨望の的になってた。
「大丈夫だから降ろしてくれよ」
「嫌だ」
俺が暴れてもビクともしない春希。
「春希、春楓が嫌がってるんだからやめなよ」
それを追いかけてきて止めようとする春翔。
「春翔は春楓の体調、心配じゃないの?」
「心配だけど、春希にだけは言われたくない」
「……それ、どういう意味……?」
保健室まであと少しの廊下でふたりが足を止めて揉めだす。
「いい加減にしろ!!もう面倒くせぇ!俺、保健室で寝てるからお前ら教室に戻れ!!」
「えっ、一緒にいちゃダメなの?」
「僕も春楓と一緒にいたいよ」
俺が一喝すると、ふたりは途端にシュンとなる。
このやり取り、いつ終わるんだろ。
「ふざけんな!保健室の先生いるのにずっと付き添いなんて出来る訳ねぇだろ!春希、いいから降ろせ!!」
「うぅ……っ……」
春希が泣きそうな顔をしつつようやく俺を降ろしてくれる。
……正直、春希に抱き上げられてる間、すごく気持ち良かった。
でも、それ言ったら春希は調子に乗るから絶対言わねぇけど。
「春楓、僕らの事、嫌いになった?」
「ごめんね、今日はもう喧嘩しないで仲良くするから嫌いにならないで」
誰もいないからいいけど、ふたりして抱きついてきて、本当に馬鹿だと思う。
てか春翔、今日はもう喧嘩しないって、別の日にまた喧嘩するかもっていう事かよ。
「はぁ、ホントお前らどうしようもねぇな……」
そんなふたりの頭をまとめてポンポンと叩く俺。
泣きそうな顔してるふたり見て、すぐ許したくなっちまう俺も同じだな。
「保健室だったら一緒にいられねぇなら、違うトコ行けばいい話だろ?でさ……」
俺、ふと閃いた事をふたりに話してた。
「それすごくいいね!」
「うん、さすが春楓だね」
「でも、体調大丈夫なの?」
「あぁ、問題ねぇよ。行こうぜ」
「「うん!!」」
俺たちは自習という名の下、ピアノの練習をするべく音楽室を目指していた。
今日の次の時間は音楽だったけど、先生が研修で不在の為、教室で自習になっていた。
つまり、音楽室はどのクラスも使ってないって事で、俺はピアノの発表会の練習をすればいいって思ったんだ。
音楽室に向かうと、案の定誰もいなかったから、俺たちは練習を始めてた。
だいぶテンポが上げられてきて、でもたまに弾き間違えて。
春翔と俺は失敗すると手がぶつかったりもするからそれも気をつけないといけなかった。
「ごめん、ちょっとひとりで弾かせてもらってもいい?」
春希が何か気になるのか、1曲通して弾いた後に尋ねてくる。
「おう」
「うん、いいよ」
低音部の春希は俺の次に弾く箇所が多い。
メロディを口ずさみながら音を確かめてる春希はすごく楽しそうで、それがカッコよくて見ていてドキドキした。
「どうしたの?もしかしてタッチが気になってたりした?」
「うん、そう。全体的には重めの方がいいのかと思うんだけど、春翔がパーカッションみたいに弾く箇所あるでしょ?あそこは少し軽めにした方がいいのかなって」
「弾き比べてみようよ、春希」
「わかった」
先生に指導はされてるけど、俺たちは割りと俺たちの感性で弾かせてもらってて、連弾の時はこんな感じで話し合ってメロディを作り上げてたりするんだ。
「春楓、どっちがいいと思う?」
ふたりがその箇所を弾いて俺に聞いてくる。
「俺は個人的にそこはみんな軽い感じで合わせる方がいい気がする」
「じゃあそうしよ、いいよね?春希」
「うん、春楓の言う通りでいいよ」
それからもう一度通して弾く俺たち。
さっきより上手く弾けたから、俺はスゲー満足してた。
発表会まであと1週間。
俺たちは試行錯誤しながら、その日に向けて力を合わせて曲を仕上げていった。
******************
発表会の日。
曲が和風な感じだからっていう事と季節的にまだイケそうって事で、俺たちはお祭りの時に着た浴衣を着て、髪をセットしていた。
春翔と俺はあえてお揃いの指輪はしないで、俺は春翔からもらった別の指輪をしていたりする。
他の教室と合同でやる発表会は市内で一番大きいホールを使って行われ、チケットさえ買えば誰でも入れる状況だった。
俺たちの親はそれぞれ予定があって来ない事になってたんだけど、いざ会場に行ってみたら早見さんが俺たちを待ち構えてた。
「こんにちは〜!!また取材させてもらいに来ちゃった!3人とも、今日もカッコイイわね〜!!」
「どうも……」
「春希くん、もう少ししたら編集終わるから、出来上がったら映像見せにお伺いするわね」
「はぁ……」
この人、他に仕事ねぇのかな。
俺たち追いかけても何もいい事ねぇと思うんだけど。
「あー!!はるかいたぁ!はるかぁ〜!!」
そこに聞き覚えのある高い声が聞こえたと思ったら背後から気配を感じた。
「お、櫂!!」
「はるか、今日は着物着てるんだね!!すご〜くカッコイイ!!」
「サンキュー!これ、浴衣だけどな」
振り返ると、そこにはたまに教室で顔を合わせる小学生の名越 櫂(なごしかい)が笑顔で俺の腰に抱きついている。
櫂は母親が俺の母親のファンだからっていう事で3歳からピアノを習い始めて今は小学生の中ではかなり上手い方だ。
そして何故か俺に憧れてるとかで、最近俺のマネをして小学校のサッカーチームに入ったらしい。
……で、春希と春翔から見ると俺にベタベタしてくる嫌な子供……だそうだ。
「君、春楓の浴衣が崩れちゃうからあんまり春楓にくっつくのはやめてくれないかな」
「え〜やだよ〜、せっかくはるかに会えたんだ。離れたくない!!」
早速春希がなんとかしようとして返り討ちに遭う。
俺にしがみついて離れない櫂に親御さんも謝ってくれたけど、俺は大丈夫ですよって言ってた。
「春楓、まさか今日ずっとこの子といるつもり?」
「今日ぐらい、いいだろ」
「う……うん、わかったよ……」
春翔は不満そうにそう言った。
「やった〜!!はるかとずっと一緒にいられる〜!!」
喜んで飛び跳ねてる櫂。
「ただし、俺の言う事はもちろん、春希と春翔の言う事もちゃんと聞く事。いいな?」
「え〜、なんではるきたちの言う事聞かないといけないの?」
「ふたりともお前より年上だし、俺の大事な友だちだからだ。それが守れないから一緒にはいられないぞ」
俺、ちょっとお兄ちゃんなところ出してみたりして。
「わかったよ。はるか、ちゃんと守るから指切りげんまんして」
納得してなさそうだったけど、櫂は俺と指切りげんまんしてくれた。
櫂の登場で早見さんは少し距離を置いてくれたけど、春希と春翔は取材以上にテンション低めだった。
発表会は4部構成で、俺たちは午後から夕方にかけての時間帯の3部の最後に演奏する事になっていた。
櫂は俺たちの6つ前で、モーツァルトの『トルコ行進曲』を弾くらしい。
俺も小学生の時に弾いたんだよな、懐かしい。
「先生にね、はるかが弾いた曲を弾きたいって言ったらこの曲にチャレンジしてみようって言われたからたくさん練習したんだよ!」
「へぇ、頑張ってきたんだな」
「うん!!」
会場まで、ホールにあったソファに座って談笑していた俺たち。
俺が櫂の頭を撫でながら言うと、櫂は笑顔を見せた。
「……あの時の春楓、かっこよかったよね。年上の人に混ざって後ろの順番で弾いてて」
「あぁ、確か小学部に入ってすぐの発表会じゃなかったかな……」
櫂に対してめちゃくちゃ感じ悪く言うふたり。
「ぼくも先生にDVDで見せてもらったよ!!はるか、堂々としててカッコよかった!!」
そんな大人気ないふたりに負けじと大声で言う櫂。
「直に見たわけじゃない君には、あの時の春楓の本当のカッコ良さは分からないだろうね」
「おい、春翔。意地悪い事言うなって」
「本当の事じゃない。あの時感じた空気、僕は未だに覚えてるよ」
「僕もだよ。あの演奏をこの目で見たから、僕も上手くなりたいって思ったんだ」
見てられなくて止めようとしたけど、春希が春翔を援護する。
あぁ、こいつら小さい子相手にヤキモチ妬きすぎ。
「……ずるいよ、ぼくだってDVDじゃなくて直接弾いてるはるか、見たいと思ってるのに……」
やべっ、櫂が泣きそうだ。
「櫂、じゃあ今度お前の前で弾くからお母さんと一緒に家に来いよ」
俺、咄嗟に閃いた事を提案してみると、
「えっ、ホント?」
って言って、途端に櫂の表情が明るくなった。
「あぁ、お母さんがいいって言ってくれたらの話だけど」
「わ〜い!!はるかのピアノが聴ける〜!うれしいなぁ!!」
喜ぶ櫂をよそに、春希と春翔は顔には出してないけどイライラしているように見えた。
開演間近になると席の案内があり、出演者は演奏順という事になっていたので俺たちは櫂とは別の席になっていた。
「ようやくいなくなってくれたね、あの子」
「春楓に憧れるのはいいと思うけど、近づき過ぎるのは頂けないよね」
俺を真ん中にして座ると、春希も春翔も周りが暗いのをいい事にめちゃくちゃ密着してくる。
「お前ら、暑苦しいんだけど」
「ごめんね。でも春楓がずっとあの子にかかりきりで寂しかったよ」
「僕も。あの子、発表会が終わったらまた春楓のところに来るだろうから、今だけこうさせて……」
「しゃーねぇなぁ……」
甘えられると、ふたりが昔の姿に見えてくる。
ただくっついてるだけなら…って思って、俺はそのままふたりの温もりを感じてた。
小さい子から俺たちと同じくらいの人、大人の人、色んな人の演奏の後、櫂の番が来た。
櫂の演奏が終わったら舞台袖に移動する事になっていた俺たち。
櫂は緊張した様子でステージに入り、中央でお辞儀をした後、ピアノを弾き始めた。
緊張のせいか、どんどんテンポが早くなっていく。
それで弾ききれなくなって、序盤で演奏が止まってしまってた。
泣きそうな顔をして動かない櫂。
どうするのかと思ってたら、その後は持ち直してそこからはミスなく安定した演奏になった。
会場は拍手に包まれて、俺もよく頑張ったな、っていう気持ちを込めて拍手をしたんだ。
櫂は俺の姿を見つけたのか、最後は笑顔で手を振ってステージを降りていた。
「序盤のあれ、もったいなかったね」
「緊張してたんでしょ。春楓の事、無駄に意識しちゃったのかもね」
「春翔、そういう言い方すんなって」
舞台袖に移動しながらそんな話をする俺たち。
「ふたりとも、ちょっと待って。浴衣直すから」
舞台袖に着くと、待機席に座る前に春希が声をかけてきて俺たちの浴衣の着崩れを直してくれる。
「ありがとう、春希」
「春希、サンキュー!」
「ううん……」
直してくれてた時の春希、カッコよかったな。
俺、ちょっとドキドキしてた。
ラストに弾くのはみんな初めてじゃない。
ここ何年かは順番は違えど俺たちがラスト3番前までに演奏してた。
去年は俺で、全体のラストだったから午前中はサッカーの試合に出てからの発表会だったよな。
俺たちのひとつ前の女の子の演奏が終わって、いよいよ俺たちの番が来た。
椅子を3脚並べてもらうと、俺たちは円陣を組んでからステージに入った。
こんなに人が入ってたんだっていうくらいの観客がいて、俺たちを大きな拍手で迎えてくれる。
「はるか〜!!頑張って〜!!」
その拍手に負けないくらいの大きな櫂の声がした。
ステージの真ん中で一礼した後、椅子の調整をすると俺たちは履いてたサンダルを脱いで手を繋いだ。
絶対、上手くいく。
ふたりの手を力を込めて握って、俺は深呼吸をするとふたりを見た。
落ち着いた、柔らかい表情をしたふたりが頷いてくれたのを見て、俺たちは弾き始める。
約3分半の演奏。
春希とも春翔とも上手く合わせられて、春希の低音の響きに合わせて弾くのも、春翔と同じメロディを揃えて弾くのも、ひとりだけテンポを落としてソロで弾いてからの3人でテンポを戻して盛り上げて弾くのもスゲー楽しくて。
会場も手拍子してノッてくれて、みんなでひとつになれたような演奏になった。
あぁ、終わっちまったんだ。
もっともっと弾きたかったな。
弾き終えた時、そんな気持ちになった。
一瞬の静寂の後、会場は大歓声に包まれて、ふたりが俺に抱きついてきた。
「春楓、ありがとう」
「すごく楽しかったね」
「あぁ!また弾こうな!!」
「「うん!!」」
ステージで一礼する前に、俺たちはそんな言葉を交わしたんだ。
******************
記念撮影を終えた後、帰ろうとしていた俺たちは櫂に呼び止められていた。
「はるか、すっごくカッコよかったよ!!ピアノ、はるかが一番上手だよね!!」
「ハハッ、ありがとな、櫂。でもピアノは俺よりも2人の方が上手いよ」
目を輝かせて俺を見ている櫂。
そんな櫂の頭を撫でながら俺は言っていた。
「春楓くんたちの息ピッタリの演奏、感動しちゃったわ!!トリに相応しい演奏だったわよ!!」
そこに、早見さんも入ってくる。
「ありがとうございます、今日が一番上手く弾けた……よな?」
「うん」
「春楓の言う通りだね」
ふたりを見ていると、自然と笑顔になる。
一緒にすごくいい演奏をしてくれてありがとなっていう気持ちで胸がいっぱいだった。
「会場がみんな君たちの演奏に夢中だったわよ!!」
「「ありがとうございます」」
早見さんの言葉に、俺たちは声を揃えてお礼を言った。
それから櫂も入って一緒に写真を撮ってもらったんだけど、俺に抱きついてる櫂が気に入らないとかでふたりは写真撮影の後、不機嫌だった。
「ママ、お腹空いた〜!ぼく、はるかと一緒に夜ご飯食べたいよ〜!!」
「そうねぇ、今日は春楓くんたちにたくさんお世話になっちゃったから一緒に食べましょうか」
「えっ、そんな……」
俺たちは断ったけど、櫂とその母親に押し切られ、近くのファミレスで晩飯をご馳走になる事になった。
******************
「僕、はるかのとなり〜!!」
真向かいのイスに春希と春翔と櫂の父親が座り、俺は櫂を間に挟んでソファの席に座っていた。
俺にべったりの櫂に向けるふたりの視線はめちゃくちゃ冷たくて、櫂の親御さんにバレないんだろうかって不安になってたりする。
「はるか、好きな食べ物なぁに?」
「俺?うーん、肉が入ってる料理なら何でも!!」
「じゃあお揃いでハンバーグにしよ!!ぼく、ハンバーグ大好きなんだ」
無邪気に笑いながら言う櫂。
「おう!ハンバーグ、美味いよな!春希と春翔は?」
「そうだね、どうしようかな……」
ひとつのメニューをふたりで見ながら悩む姿が可愛らしく見える。
「はるとたちはハンバーグやめてね!ぼくとはるかがお揃いだから!」
「こら、櫂、お兄さんたちに失礼だぞ」
「だってはるとたち、何でもはるかと一緒なのずるいじゃん!!」
櫂の言葉に父親が注意してくれたけど、櫂の耳には全然入っていない。
で、ふたりはそんな櫂の言葉に平静を装おうとしてるのが見えた。
「そうだね。僕らはいつでも一緒だから、今日は違うものにするよ。ね?春希」
「あぁ、君はいつでも一緒にいられないからね。今日は譲ってあげるよ」
……平静を装ってる風で端々に悪意を感じる。
大丈夫なのか、こんな状態で。
「3人はすごく仲良しなんですね」
「はい、ずっと一緒に過ごしてきたので、逆に一緒にいないと落ち着かない時もあります」
親御さん、気づいてなさそうだ、良かった。
「いいな〜、はるかとずっと一緒なんて」
「僕らも幸せだと思ってる。春楓はどんな時も僕らの味方でいて、支えてくれてるからね。…だから、春楓を困らせたり悲しませる事をする人がいたら絶対許さないよ」
春希、淡々と話してるようで声めちゃくちゃ低くて怖いんだけど。
そんな談笑をしてるうちに料理が運ばれてきて、俺は櫂と同じハンバーグセット、ふたりは櫂の親父さんと同じチキンステーキセットを食べ始める。
「はるか、ぼくが食べさせてあげるからあーんして」
「えっ、マジかよ。恥ずかしいな…」
「やってやって!!」
俺、ふたりの目の前で櫂にハンバーグを食べさせられる。
ふたりの目つきがちょっと変な気がした。
「はるか、ぼくにもやって!!」
「りょーかい、はい、あーん」
櫂にやる分には全然恥ずかしくねぇんだけど、ふたりの目は気になるな。
櫂のリクエストに答えて食事を済ませると、俺はふとトイレに行きたくなって席を立っていた。
櫂がついていくって言い出したけど、それは流石にどうかと思って止めて、ひとりで用を足し、席に戻ろうとトイレのドアを開けた。
「!!」
するとそこに春希がいて、ドアに鍵をかけて俺をすぐ横の壁に押し付けてくる。
「おま……っ……」
抱きしめられて、臀を撫でられながら熱いキスをされ、俺はそれを拒めなかった。
「んん……ッ……!!」
春希がキスをしながら時折漏らす息が色っぽい。
こんなところで…って思ってるのに、春希の舌が気持ち良くてその動きについつい応えちまう。
「ふふっ、春楓もしたくてたまらなかったんだね。舌の動き、すごくいやらしかったよ」
「や……違……っ……!!」
わざと耳元で囁きながら、春希は臀から股間へと手を移動させ、浴衣越しに俺のシンボルを撫でてきた。
「ココ、このままじゃあの子に見られちゃうから鎮めていかないとね」
「お…お前のせいだろ……っ……!!」
帯を解いて下着をずらすと、春希の手が俺のを包んでくる。
先端を擽られながら上下に動かされて、ソコに熱が集まってくる感じがした。
「っあ……はるき、ダメ……ッ……!!」
扱かれる度にくちゅくちゅと音がして、それが恥ずかしくてそんな言葉を発してしまう。
「春楓のダメはもっとしてって事だよね」
「や……あぅ……うぅっ……!!」
春希がその場にしゃがんだと思ったら、俺のを口に含んでキツく吸い上げてきた。
その刺激に俺はすぐイッちまって、春希は俺の精液を飲み干すと嬉しそうに口元を緩ませる。
「可愛い、春楓のその顔。今すぐ抱きたいけど、ここじゃ駄目だから早く帰ろうか。春翔はまだ我慢出来るのかもしれないけど、僕はもう限界」
室内にあったうがい薬で口をすすぐと、春希は俺の浴衣を直しながらそう言った。
「ど…どうするつもりなんだよ……」
「僕に任せて」
額にキスをすると、春希は俺の肩を抱いて身体を支えるようにして席まで歩いていく。
「すみません、春楓、急に熱が出たみたいなので僕らが家まで送ります。今日はありがとうございました。春翔、春楓のカバン持ってくれる?」
「あ、うん、分かった」
「それは大変ね、お大事に」
「え〜、はるか帰っちゃうの?さみしいよぉ〜」
「櫂、春楓くん、具合悪そうだろう?熱があるのに一緒にいてもらうのは駄目だ」
「はるか〜、元気になったらピアノ聴かせてね!!」
イッたばかりで頭がぼーっとして、何も考えられなくて、言葉が出てこなかった。
俯き気味の俺は紅い顔だったんだろう、親御さんたちは春希の言葉を信じてくれたようだ。
俺たちの様子を見て察したっぽい春翔が俺のボディバッグを持ってくれると、俺たちは足早に店を出ていた。
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「随分強引な事したね、春希」
「春翔は平気なの?あんな可愛い春楓を目の前でただ黙って見ているとか、僕はあれ以上は堪えられない」
「気持ちが分かるからこうして一緒に出てきたんだよ。ここからだと僕の家が一番近いからタクシー拾って早く移動しよう。……いいよね?春楓」
「う……んんっ……」
身体の中にまだ残ってる熱。
俺、1度イッたのに、まだこんなに身体が熱いなんて。
俺は首を縦に振っていた。
春翔がタクシーを拾ってくれて、代金も真っ黒いカードで支払ってくれて、俺たちは春翔んちに向かってた。
「母さん、学会でいないから安心して」
春翔んちに到着してリビングの横にある和室に移動すると、春翔がキスしてくる。
背後には春希がいて、浴衣の帯を再び解いていた。
「ん……んんん……っ……!!」
春翔と唇を啄みあいながら舌を絡ませあっていると、春希が俺の乳首を刺激してくる。
「春楓の可愛い乳首、さっき弄るの我慢してたんだ」
「ふぁ……あぁっ……!」
耳朶を甘噛みしながら、春希は俺の乳首をキツく摘んできた。
身体の熱が更に上がって、俺はビクンと身体を震わせてしまう。
「あの子、春楓がこんなに可愛くていやらしいって知らないなんて可哀想」
「春希、それは僕らだけが知ってればいいコトじゃない」
「それはそうなんだけど、ああいう図々しい子には春楓が誰のものか見せつけておいた方がいいんじゃないかなって思うんだ」
「あぁ、そういう事?それは一理あるね」
ふたりがそんな会話をしながら同時に胸元に唇を近づけてくる。
「はぁ……ッ、あぅっ……!!」
それぞれ違う感触で触れられて、声を上げずにはいられなかった。
「その色っぽい髪型で浴衣はだけて喘いでるの、すごくいやらしいね……」
「僕らの事そんなに煽ってくるの、反則過ぎるよ、春楓」
手は乳首に触れたまま、ふたりの唇が下へと降りていく。
「ふたりで舐めてイカせてあげようか。春翔、僕さっき飲ませてもらったから春楓がイッたら春楓の精子、君が飲んでいいよ」
「春希、やっぱりさっきトイレでHな事したんだね。春楓の顔見てそうじゃないかと思ってたんだ。君ってホント、ケモノだよね」
「……そうだね。僕は自分の事、春楓を悦ばせたくてたまらないケモノだと思う……」
ふたりは話しながらも動きは止めなくて、恐らく春希の手が俺の下着を脱がせると両端をふたりの舌で同時になぞられた。
「んぁぁっ、ダメっ、それダメだって……っ……!!」
「春楓、さっき出したばっかりなのにココ、すごく詰まってる感じがするよ」
「1回抜いただけじゃ満たされなくなっちゃった?春楓の、すごく濡れてる……」
春希の手が俺の陰嚢をふにふにと触ってきて、春翔が俺のを扱きながら口に含んでくる。
「や……あぁんっ、も……でるぅ……ッ…!!」
ふたりの指が後孔に伸びて少しずつ挿れられると俺はイッちまったんだけど、ふたりのソコを弄る指は止まる事なく、俺のナカを進んでいく。
「あぁっ、あふ……っ……」
「物足りなさそうだね、春楓」
「腰揺らしてるの、めちゃくちゃいやらしいよ」
イキっぱなしの状態でイイトコロを指で弄られて意識が飛びそうになったけど、春希に身体を起こされ、膝の上に載せられて頬をつねられる。
「なに…すんだよっ……」
「気を失うにはまだ早いかなって思って」
「ひゃ……あぅぅ……っ!!」
耳元で甘く囁いて鎖骨の少し下をキツく吸いながら、春希は俺のナカに挿ってきた。
一気に奥まで突かれて、俺は頭から足先に電気が走ったような感じで、ビリビリした感覚に襲われたんだ。
「ちょっと春希、勝手に先に挿れないでよ。僕だって春楓に今すぐ挿れたいのに」
「え……?僕、ケモノだからこれ以上待つの無理」
「あぁっ、はるき、やあぁんっ…!!」
元々が堅くて太いのに、春希のは俺の腰を掴んで突く度にその堅さも太さも更に増していく。
「春楓、自分でも腰振ってくれてるの、すごくいやらしくて可愛い……」
そう言って春希は俺の髪を撫でながら弱いトコロをぐりぐりとその堅さが分かるように刺激してくると、そのまま俺のナカに射精していた。
「はぁ……うぅ……っ……」
頭がくらくらして、春希の身体にもたれかかって荒い呼吸を繰り返す俺。
「お待たせ、春翔。早く済ませたよ」
「春希、今度絶対埋め合わせしてもらうからね」
そんな俺をよそに、春翔が間髪入れず後ろから俺を貫いてくる。
「ごめんね、春楓……」
「や……あぁぁ…っ……!!」
優しくそう耳元で囁いてくれたけど、春翔も腰の動きは激しくて。
ぱちゅ、ぱちゅっていう水液の滴る音をさせながら俺のナカを出入りしてたんだ。
「ひ……ッ、はると、おれ……っ、またせーしじゃないのでそう……あぁッ!!」
前に感じた尿意に似た感覚。
それが俺を支配していって、イキっぱなしのソコから違うモノが勢い良く溢れ出る。
「あぁっ、も……むり……ッ……」
春翔が俺のナカでイクのを感じながら、俺はだんだん意識が遠のいていったんだ……。
******************
気がつくと、俺は春翔のTシャツとハーフパンツを着せられて春翔の部屋のベッドに寝かされていた。
「早速埋め合わせしてもらったよ。春希、浴衣持って帰ったから。おばさんには疲れてうちで寝ちゃったって連絡してあるから大丈夫だよ」
すぐ傍で俺を抱きしめながら、春翔は笑顔で言った。
「シャワー入ろ、春楓」
「……おう」
時計を見ると、23時を過ぎていた。
春翔んちに着いたのが19時過ぎてたくらいだったからどのくらいHしてたか分かんねぇけど、結構寝ちゃってたんだな。
シャワーに入ると、春翔が俺の身体を優しく洗ってくれたから、俺も春翔の身体を洗った。
「今日はすごく楽しかったね。……あの子がいた事以外」
「そんなに嫌うなよ、櫂の事」
風呂から出ると、春翔が身体を拭いてくれて髪をドライヤーで乾かしてくれる。
「分かってる。でも、僕も春希も春楓の事が大好きだから、春楓に好意を持ってる人に優しくしているのを見ると例え小さい子でもイライラするよ」
「あ……そう……」
ふたりに大事に想ってもらえてるのは嬉しいけど、俺たちもしかしたら幼稚園の先生になるかもしれないのに、こんな事で大丈夫なんだろうか。
俺はそんな一抹の不安を覚えていた。
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