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第10話

「…迷ってる」 目を伏せた祐也は、綺麗だ。 「変なんだ、俺。あんなに橋本さんが好きだったのに…最近、橋本さんのことで苦しまなくなった。だから、橋本さんが男と付き合ってても、悔しいとか、奪ってやるとか…思わないんだ」 「それって…」 もう好きじゃないってこと? 俺は、それを聞かされて…どうすればいいんだ? 「代わりに最近…別のヤツが思い浮かぶようになった。前まで何とも思ってなかったのに、何でか気になってしょうがなかった。なあ…これって、どういうことだと思う?」 顔を上げて真っ直ぐ俺を見つめた祐也は、眉を顰めて、顔が少し赤かった。その男のことを思い出してるんだろう。きっと祐也は、もうその男のことが好きなんだ。それに気付くのも時間の問題だろう。 …どうして、いつも俺じゃないんだろう。俺の何が、駄目なんだろう。 頭の中が渦を巻いて、自分が黒く染まっていく気がした。

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