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第三章 幸せと不穏な影
改めて見ると、聖の部屋は一風変わっていた。
特に目を引く、グリーン。
多くの観葉植物が、青々と茂っている。
「植物は、手を掛けただけ応えてくれます」
そう言いながら、水を与える聖を、駿佑は見ていた。
(寂しいから、植物を育てているんだな)
そんな風に、解釈した。
「なぜ、植物を? ここはペット可のマンションだろう」
ネコや小型犬を飼えばいいのに。
それには、こんな答えが返ってきた。
「僕、時々ふらっと外泊したくなる時があるんです。動物だと、それができなくなるでしょう?」
「そうか」
短く、駿佑は答えた。
(誰もいない広いマンションに、一人でいたくない時もあるんだろう)
そんな風に、思った。
後は、生活雑貨の他に何もない聖の部屋だ。
高校生らしさのない、シンプルな部屋だった。
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