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第五章・8
「聖も、殴りたかったか?」
「いいえ」
「腹の虫は、治まった?」
「はい」
行こうか、と駿佑は聖の背を押した。
優しい手。
こんなに優しい駿佑さんが、掃除となると悪魔に変わる。
(どっちが、本当の駿佑さんなんだろう)
そこまで考えて、聖は唇に指を這わせた。
『おまじないだ』
温かなキスだった。
(駿佑さんは、優しい人に決まってる)
車に乗り込み、二人は雑居ビルを後にした。
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