39 / 118

第五章・8

「聖も、殴りたかったか?」 「いいえ」 「腹の虫は、治まった?」 「はい」  行こうか、と駿佑は聖の背を押した。  優しい手。  こんなに優しい駿佑さんが、掃除となると悪魔に変わる。 (どっちが、本当の駿佑さんなんだろう)  そこまで考えて、聖は唇に指を這わせた。 『おまじないだ』  温かなキスだった。 (駿佑さんは、優しい人に決まってる)  車に乗り込み、二人は雑居ビルを後にした。

ともだちにシェアしよう!