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第七章・2
「少し、焦げ臭いな」
調理器具を見ると、使い慣れた鍋が一つ消えている。
「聖、ここにあった鍋を知らないか?」
「僕、何にも知りません」
怪しいな。
そっとリビングをのぞくと、聖が何かを慌てて新聞紙で包んでいる。
(鍋を焦がしたのか)
鍋一つで怒ったりしないのにな。
ふっと微笑むと、駿佑は別の鍋で料理に取り掛かった。
今夜は冷える。
「おでんにするか、ポトフにするか。はたまた、シチューといくか」
ここは、訊いてみるに限る。
「聖、夕食は何がいい?」
「ロールキャベツが食べたいです!」
「了解」
予定と全く違うが、まあいい。
こんなにパートナーに甘いのは、初めての駿佑だ。
聖の頼みなら、ついつい何でもきいてしまう。
「クリームシチューに、ロールキャベツを入れてみるか」
鼻歌まじりで、駿佑の料理が始まった。
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