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第七章・4
翌日、駿佑が外出から帰宅すると、キッチンに聖はいなかった。
「もう、飽きたのか?」
「何の話ですか?」
リビングのソファでいつものように資料を整理していると、香り高いコーヒーが運ばれてきた。
「駿佑さん、コーヒーをどうぞ」
「お、ありがとう」
「それから、これも」
見ると、赤い包装紙と白のリボンでラッピングされた箱だ。
「バレンタインデーの、贈物です」
「バレンタインデー?」
「数日前から、手作りで……。失敗して鍋を一つダメにしました。ごめんなさい」
駿佑は、悶絶しそうだった。
「聖。男に言うセリフではないかもしれないが……、可愛いぞ」
「駿佑さんになら、そう言われても嫌味に聞こえないなぁ」
ふふふ、と体を寄せてソファに座る聖。
「開けてみてください」
「ありがとう」
包装を解き蓋を開けると、丸いトリュフがお行儀よく並んでいた。
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