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第七章・7
「ん、ふっ。ぅん、んんぅ……」
口の中で、ゆっくりと溶けてゆくチョコレート。
甘くて、少し苦い。
そして、ほんのり洋酒の香りのする、大人の味がする。
駿佑の舌は、そんなチョコを聖の口の中へと送り込む。
まるで、親鳥がひなに与えるように。
聖は腕を上げ、駿佑の頬に手を添わせた。
両手で挟み、逃げられないようにしておいて、欲しいだけチョコを口移しで味わった。
長い、甘い、熱い、キス。
終わる頃には、二人ともふわふわと夢見心地になっていた。
「……駿佑さん」
「何だ?」
「ハッピー・バレンタイン」
「確かにな」
こんなに幸せな心地になれる2月14日は、初めてだ。
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