57 / 118
第八章 発情期
少し眠気の来る、午後の授業。
聖は、突然教師に名前を呼ばれた。
「白井、ちょっと教壇へ来なさい」
「はい」
何だろう。
ぼんやり、駿佑さんのことを考えていたことが、バレたのかな?
行ってみると、教師は体をかがめて小声で言った。
「すぐに、保健室へ行きなさい。フェロモンが出ているかもしれない」
「え?」
「早く」
「は、はい」
廊下を小走りで、聖は駆けた。
保健室へ入ると、養護教諭がすぐに薬棚から小箱を取り出した。
「白井くん、発情抑制剤は飲んでる?」
「いいえ。僕はまだ発情期を迎えていませんから」
じゃあ、これを飲みなさい、と養護教諭は錠剤を渡してきた。
「でも、僕」
「始まったみたいよ、発情期。かすかにフェロモンの気配がするわ」
聖の胸は、とたんにざわめいた。
ともだちにシェアしよう!