58 / 118

第八章・2

「先生には、解るんですか?」 「私は養護教諭だから、それなりの勉強と研修を受けているので解るわよ」 「じゃあ、僕をここによこした数学の向江(むかえ)先生は……」 「彼は大人のαだから、敏感なんでしょう」   大人のα。 (そしたら、駿佑さんも……?)  発情期を迎えた僕を、駿佑さんはどう扱うだろう。  それを考えると、聖の胸は重くなった。  Ωの発情フェロモンは、αやβを性的に誘引するという。 (僕、駿佑さんのお荷物になっちゃうかもしれない)  そうしたら、僕のマンションから出て行ってしまうかもしれない。  聖は、それを恐れた。  また僕は、一人ぼっちになってしまう。  気分が悪い、と養護教諭に訴え、聖はその後早退した。

ともだちにシェアしよう!