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第八章・2
「先生には、解るんですか?」
「私は養護教諭だから、それなりの勉強と研修を受けているので解るわよ」
「じゃあ、僕をここによこした数学の向江(むかえ)先生は……」
「彼は大人のαだから、敏感なんでしょう」
大人のα。
(そしたら、駿佑さんも……?)
発情期を迎えた僕を、駿佑さんはどう扱うだろう。
それを考えると、聖の胸は重くなった。
Ωの発情フェロモンは、αやβを性的に誘引するという。
(僕、駿佑さんのお荷物になっちゃうかもしれない)
そうしたら、僕のマンションから出て行ってしまうかもしれない。
聖は、それを恐れた。
また僕は、一人ぼっちになってしまう。
気分が悪い、と養護教諭に訴え、聖はその後早退した。
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