60 / 118
第八章・4
「お昼から眠るなんて、難しいです」
「たまには、いいさ。目を閉じて」
「駿佑さん、……瞼にキスしてくれませんか?」
駿佑は、焦った。
これまで何度も聖を抱いたが、こんなに積極的な彼は初めてだ。
「何だか、妙な気持ちになってきたな」
乞われるままキスをした駿佑だったが、胸の奥に火が灯った気分だ。
「妙な気持ちで、正解かもしれません」
「どういう意味だ?」
実は、とそこで初めて聖は学校での出来事を話した。
自分に、発情期が訪れたかもしれない、ということを。
「保健の先生に、病院へ行くように言われました」
「聖が、発情」
駿佑の反応は、意外にもひどく滑稽だった。
せわしく目を瞬かせ、口をぱくぱく開けたり閉じたり。
髪を両手で掻き上げて、こめかみをぐりぐりしてみたり。
「それは……、おめでとうと言うべきことなんだろうか」
「僕にも解りません」
でも、と聖は瞼を伏せた。
ともだちにシェアしよう!