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第八章・4

「お昼から眠るなんて、難しいです」 「たまには、いいさ。目を閉じて」 「駿佑さん、……瞼にキスしてくれませんか?」  駿佑は、焦った。  これまで何度も聖を抱いたが、こんなに積極的な彼は初めてだ。 「何だか、妙な気持ちになってきたな」  乞われるままキスをした駿佑だったが、胸の奥に火が灯った気分だ。 「妙な気持ちで、正解かもしれません」 「どういう意味だ?」  実は、とそこで初めて聖は学校での出来事を話した。  自分に、発情期が訪れたかもしれない、ということを。 「保健の先生に、病院へ行くように言われました」 「聖が、発情」  駿佑の反応は、意外にもひどく滑稽だった。  せわしく目を瞬かせ、口をぱくぱく開けたり閉じたり。  髪を両手で掻き上げて、こめかみをぐりぐりしてみたり。 「それは……、おめでとうと言うべきことなんだろうか」 「僕にも解りません」  でも、と聖は瞼を伏せた。

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