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第八章・5
「以前保健体育で学習した『発情期』は、気を付けないと誰かれ構わず盛ることになる、って」
僕は、そうなりたくありません。
聖は、駿佑の手に自分の手を重ねた。
「僕が発情したいのは……、駿佑さんだけなんです」
「……」
黙ってしまった駿佑の顔を、聖はそっと覗き込んだ。
(僕、何かまずいこと言ってしまったかな?)
しかし、その顔を見て沈黙の意味が解った。
駿佑は、真っ赤になってしまっていたのだ。
「……私は今、猛烈に照れている」
「見れば解ります」
「聖は、純粋だな」
「そうですか?」
はあ、と駿佑は大きく息を吐いた。
「その天然の殺し文句は、大したもんだ」
口では到底かなわない。
だったら、行動で対等になるしかない。
駿佑は、聖の額にキスをした。
「確かに医者にかからなきゃならないが、その前にやっておきたいことがある」
今度は、唇にキスをした。
「いいか? 今からでも」
「……はい」
エアコンで程よく温まった空気が、どんどん暑くなりはじめた。
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