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第八章・8
「駿佑さん、僕もう動けません……。病院は、明日でいいですか?」
「ああ、そうしよう。私も今は、正気じゃない」
二人で抱き合い、しばらくまどろんだ。
(僕、駿佑さんの赤ちゃん欲しいな……)
(聖が私の子を産んでくれたら、どんなに嬉しいか)
互いの気持ちは同じだが、駿佑には架せられた業があった。
(掃除屋が家族を持つ、なんて聞いたこともない)
常に危険と隣り合わせの、稼業だ。
しくじれば、死を招く。
そしてそれは、自分の家族にまで及ぶかもしれないのだ。
(無理な話だ。私では、聖を幸せにできない)
それでも薄夢には、聖が出てきた。
彼の腕には、まだ見ぬ子が抱かれていた。
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