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第九章・6

 マンションに着くと、玄関で聖は駿佑にかじりついた。 「僕、怖いんです」 「不安にさせたな。すまない」  優しくキスをし、駿佑は聖にお願いをした。 「コーヒーを淹れてくれないか? 少し話をしよう」 「はい……」  聖はていねいにコーヒーを淹れたが、カップを持つ手は震えていた。  その手を取ると、駿佑は自分の頬に当てた。 「誰にも言わない、と約束してくれ」 「はい」 「実は今回、洪隆会を掃除することになっている」  聖は、耳を疑った。  洪隆会といえば、指定暴力団だ。  この街を拠点に、海外とも取引を行っているという噂もある。 「そんな恐ろしい相手を、なぜ……」 「洪隆会は、薬物の売買を資金源にしているんだ。奴らの卸したヤクで、大勢の人間が人生を台無しにされている」 「だから、駿佑さんが」 「そうだ」  イヤです、と聖は震える声で言った。

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