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第九章・7
「クスリに負ける人間の方が、弱いんです。そんな人たちのために、駿佑さんが危険を冒すことはありません」
「それでも、依頼は引き受けた」
「お断りしてください。今すぐに。まだ、遅くはありません」
解ってくれとは言わない、と駿佑は聖の手に口づけた。
「ただ、見ていて欲しい。これが、私の生きざまなんだ」
「駿佑さん……」
ぽろぽろと零れる聖の涙を、駿佑は指でぬぐった。
「すまない。やはり言うべきではなかったな」
「……いいえ。話してくれて、ありがとうございます」
駿佑のターゲットが暴力団と知って、聖は取り乱した。
しかし、彼の信頼があって、打ち明けられたとの事実も受け止めたのだ。
「僕は今までどおり、普通の高校生として生活していればいいんですね?」
「その通りだ。決して誰にも言ってはいけない。特に、警察には」
警官の中には組員と懇意にしていて、密告者をバラす恐れのある者もいるという。
「お巡りさんの中にまで、そんな人がいるなんて」
「これが大人の世界だよ、聖」
もう一度駿佑は、すまない、と謝った。
胸に咲いた純白の花を、穢してしまった気がした。
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