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第九章・8
泣き疲れて眠ってしまった聖を胸に抱き、駿佑はソファに横になっていた。
「下手をすれば、殺される」
そうハッキリ言わなくても、聖には解ったはずだ。
彼は、聡い。
「だが、もう後戻りはできないんだ」
いつまで、このマンションにいられるだろう。
洪隆会の手が駿佑に伸びて来れば、すぐにここを引き払うつもりでいた。
「聖だけは、危険な目に遭わせられない」
この無垢な笑顔を、曇らせるわけにはいかない。
だがしかし。
「私がいなくなると、泣くだろうな……」
深く、愛し合ってしまった。
こんなにも、深く。
見開いたままの駿佑の目じりから、一筋だけ涙が流れた。
聖との別れを思うと、身が引き裂かれる思いだ。
それは、駿佑も同じことだった。
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