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第十二章・5
「来てくれたんですね!」
「用事が早く済んでな」
嬉しい、と素直に喜ぶ聖が可愛い。
「一杯やっても、いいか」
「どうぞどうぞ」
「おや。いつもなら、飲み過ぎは体に毒だと止めるのに」
「一杯だけですからね」
言葉尻を捕らえられ、駿佑は苦笑した。
聖の言いつけ通り、ジンを一杯だけ飲んだ。
空のグラスを手でいじりながら、駿佑は聖に打ち明けた。
「実は今夜、ある人と会って来た」
「ある人?」
「洪隆会を壊滅させる手助けをしてくれる人だ」
にこにこと上機嫌だった聖は、顔を引き締めた。
これは、駿佑さんの掃除の話だ、と緊張した。
「今度、組は大掛かりな取引を行う。海外から密輸したブツを、荷揚げするんだ」
「薬物、ですね」
「そうだ。その日時と場所の情報を、私は組に潜入して掴んだ」
聖は、瞼を閉じた。
そのために、駿佑さんは洪隆会の組員になったんだ。
刺青まで、彫って。
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