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第十二章・6

「私もその場に立ち会うことになっている。新参者なのに、なぜか上の人間に目をかけられてな」 「駿佑さんも!?」  聖は途端に不安になった。  何か、危険な目に遭うのでは!?  しかしそれには、大丈夫だ、と駿佑は彼を落ち着かせた。 「ただ、その場に居合わせた組員として逮捕される恐れがある。すぐに釈放してもらえる手筈にはなっているから、心配しないでくれ」 「よかった……」  胸をなでおろす聖を、駿佑は抱き寄せた。 「お酒臭いですよ、駿佑さん」 「このヤマが終わったら、私は掃除屋を辞めるよ」 「……駿佑さん?」 「真っ当な仕事をして、聖にふさわしい男になろうと思っている」 「……」 「君も知っての通り、過去には散々汚い仕事をしてきたわけだが。こんな私でも、一緒にいてくれるか?」 「……!」  ただ黙って、聖は駿佑にかじりついた。  胸に頭を押し付け、込み上げる嗚咽を必死で耐えた。 (駿佑さん。駿佑さんが、僕のために!) 「駿佑さん……!」  聖は、泣いた。  きれいな涙だった。

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