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第十二章・7
3月25日、午前2時、勝巳漁港。
某国からの密輸船は沖へ停泊し、そこから中型の船が荷を積んでやって来た。
待ち受けるのは、稲垣と数名の舎弟。それから、荷を運ぶための若衆だった。
その中に、駿佑の姿もあった。
船から降りた男は稲垣と握手をし、船員は荷を次々と降ろしている。
稲垣の手にしたアタッシュケースには、現金が一千万円詰め込まれている。
むろん、これは単なるリベート。
この重要な積み荷の対価は、マネーロンダリングされた後に口座へ振り込まれることになっている。
「今後も懇意にしていただけると嬉しいですよ」
「稲垣さんは、私の大切な商取引相手です」
通訳を介してそのような言葉を短くやり取りし、男たちは次の作業へ移り始めた。
船から降ろされた荷を、トラックへ運び入れるのだ。
全てが、必要最小限の明かりの中で行われていた。
そこへ、突然まばゆい光が照らされた。
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