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第十三章・4

 電話で打ち合わせたとおり、大島と名乗る男が病院の出入り口で待ってくれていた。 「僕が白井です。駿佑さんは、どこですか!?」  考えていたよりずっと幼いその姿に大島は一瞬驚いたが、駿佑の趣味をどうこう言っている暇はない。 「こちらです」 「はい」  小走りで通路を歩き、病室へ入る。  そこには、医療機器に囲まれた駿佑が、静かに眠っていた。 「……駿佑さん」  堰を切ったように、聖の目から涙がぽろぽろとこぼれてきた。  彼の手を取り、頬に当てた。 「駿佑さん……、駿佑さんのバカ……。起きてください、早く……!」  痛々しい聖の姿に、大島は気休めを口にした。 「右の背中から入って右の腹から出た弾は筋膜に入り、筋膜に沿って身体の外に出たんだ。弾が腸を傷つけてしまうと、出血量が多くなって死んでしまう確率が高くなる。彼は、運がよかったんだよ」 「運がいいなら、目を覚ましますよね。このまま死んじゃったり、しませんよね!」  それには自信を持って、イエスと答えられない大島だ。  泣きじゃくる聖を、昏睡状態の駿佑を、ただ見守るしかなかった。

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