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第十三章・5
「駿佑さん、好きです。愛してます。だから、僕の所へ帰って来て……」
聖は、もう泣いてはいなかった。
ただ、駿佑を救うために。
彼を引き戻すために、耳元でささやき続けた。
初めて駿佑に会った時のことを、思い。
ミケを殺した少年たちを掃除した彼を、思い。
そして元町老婆のために、黒ネコを選んだ時のことを、思った。
(掃除をしている時の駿佑さんは怖いけど、その他の時の彼はあんなにも優しいんだ)
美味しい料理を、ご馳走してくれて。
大切に、抱いてくれて。
きれいな蘭を、プレゼントしてくれて。
聖の胸は、駿佑との思い出と、彼への想いでいっぱいだった。
「駿佑さん、愛してます……」
声がかすれるまで、繰り返した。
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