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第十三章・6
駿佑は、薄暗がりの中にいた。
どちらに行こうか迷う。
こっちに行ってみようか。
何か知らない、初めての世界が広がっている気がした。
「ん?」
そこへ、足元に擦り寄ってくるネコがいる。
「お前は……、ミケか?」
元町さんが、可愛がっていたネコ。
ひどい殺され方をして、彼女は泣いていた。
だが、もう一人、泣いていた人間がいたはずだ。
『なぜ、泣く』
『すみません。ちょっと、いろいろ考えちゃって』
ネコの死因や老婆の心傷を想像しただけで、涙を流す。
そんな心優しい、Ωの子が。
「聖」
そうだ、聖だ。
「早く、彼の元へ帰らないと」
掃除は、完了した。
私はもう、掃除屋を辞めるんだ。
彼の元で、きれいな商売を始めるんだ。
愛する聖の元で。
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