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第十三章・7
聖が握っていた駿佑の手が、ぴくりと動いた。
「駿佑さん!?」
医師と、看護師が慌ただしく動き始める。
かすかに駿佑の唇が動き、何か言おうとがんばっているようだ。
「駿佑さん、何も言わなくていいですから。大丈夫ですから!」
「……り、聖」
「駿佑さん!」
うっすらと瞼を開き、駿佑は目を赤く泣きはらした聖を見た。
「なぜ、泣く」
「駿佑さんが帰って来てくれたから、嬉しいんです」
「そうか」
「そうです」
「じゃあ、いつもちゃんと、帰って来なくては、な」
「そうしてください」
やがて、ぼんやりとした駿佑の意識は、はっきりとしたものに変わっていった。
「ここは、病院か? ああ、私は撃たれたんだ」
「駿佑さん、死にかけてたんですよ」
ぎゅっと握った聖の手を、駿佑は握り返した。
「心配かけて、すまない」
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