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第十三章・8
二人の様子を見守っていた大島は、ほっとした声を出した。
「飛沢、もう大丈夫だ」
「ご迷惑をおかけしてしまって」
それを言うなら、白井くんにだろう、と大島は茶化した。
「謝る以外に、何か言うことはないのか? 白井くんの声は、届いてたんだろう?」
謝る以外に、言うこと。
かすれた聖の声を聞けば、ずっと手を取って訴えかけてくれていたことが解る。
彼がかけてくれた言葉も声も、ちゃんと覚えているつもりだ。
「大島さんがいるので、少し恥ずかしいが」
「何ですか?」
「好きだ、聖。愛しているよ、誰よりも深く」
「駿佑さん……!」
ぽろぽろと、再び聖は涙をこぼし始めてしまった。
「大島さんのせいで、聖が泣きましたよ」
「人のせいにするな」
ああ、駿佑さん。
早く退院しましょうね。
退院したら、水族館へ行きましょう。
イルカショーを見て、水槽のあるレストランに入って、大水槽の前でのんびりお魚を眺めて……。
そんな聖の髪を、駿佑は優しく撫でていた。
ずっとずっと、撫でていた。
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