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第十四章・2
黒ネコのクーと一緒に、一人で暮らす元町老婆は、先月転倒して膝をひどく打った。
幸い寝たきりになることはなかったが、まだ痛みを騙しだまし動いている。
家事が辛くなった彼女は、離れた所に住む息子夫婦と同居することになったのだ。
「あちらには先住ネコちゃんがいるので、クーを連れて行けないそうなんです」
「それで、聖が引き取ったのか」
『私、もうこの年でしょう。きっと、クロちゃんより先に死んじゃうわ』
『縁起でもないこと言わないでください、それに、もしも飼えなくなった時は、僕が引き取ります』
あの時の言葉を、聖は忘れてはいなかった。
そして、そんな聖に駿佑は惚れ直していた。
「白い掃除屋は、アフターケアまでバッチリというわけだ」
「何ですか、それ」
「いや、まさか私がネコを飼うことになるとはな」
自分のマンションは大学に進んだ弟に譲り、聖は駿佑のマンションに同棲していた。
クーは、駿佑宅に引き取られることになったのだ。
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