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第十四章・3
「良かった、間に合った!」
引っ越しはすっかり済んだ元町は、あとは自分だけが息子の運転する車に乗り込むところだった。
「まあ、聖くん! それに掃除屋さんも!」
「もう、その『掃除屋さん』というのは、勘弁してください」
苦笑いの、駿佑だ。
今はもう、掃除屋は廃業した。
刺青も消し、きれいな仕事に就いている。
「足は、大丈夫ですか?」
「こんな風にお天気のいい日は、具合がいいのよ」
それより、と元町は心配そうな顔つきになった。
「クーちゃんは、いい子にしてる? 迷惑かけてない?」
「大丈夫ですよ。すごく可愛いです」
それには複雑な気持ちの、駿佑だ。
来て早々にジンの入ったグラスをタブレットに倒し、台無しにしてしまった。
僕が弁償しますから、と必死にすがる聖が可愛いので、すぐに許してあげたが。
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