「元町さん、このお花受け取ってください。引っ越し祝いのお花です」 「きれい……！」 　美しい華やかなブーケを抱いて、元町は聖を見た。 　そして、目を細めた。 「高校生の頃と、ずいぶん変わったわねぇ、聖くん。綺麗になったわ。このお花に負けないくらい」 　痩せて青白く、寂しげな目をしてミケの背中を撫でていた聖少年は、もうそこにはいない。 　輝くばかりに美しくたくましく成長した青年の姿が、ここにある。 「あなたのおかげでしょう、飛沢さん」 「いえ、私は別に」 　嘘おっしゃい、と元町は肘で駿佑の横腹をつついた。 　二人が心から愛し合っていることなど、時々遊びに来てくれた頃から承知している。 「早く結婚なさい。そして、赤ちゃんの顔を見せて」 　その言葉には、二人とも赤くなってしまった。 「お母さん、そろそろ行くよ」 　息子の声に、元町は明るく返事をした。 　そして、二人の手を取り重ねて、目をキラキラさせて言った。 「二人の赤ちゃんを見るまでは、長生きするから。頼んだわよ」 「それはさておき、お元気で」 「さようなら、元町さん」 　息子の車に乗り、いつまでも手を振る元町を、二人は見送った。