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第十四章・5
「せっかく外へ出たから、どこかへ寄ろうか」
「賛成!」
「行きたいところはあるか?」
「僕、植物園へ行きたいなぁ」
その返事に、駿佑は半ば呆れた。
「花屋で毎日緑に囲まれているのに、その上植物園か?」
「夏の植物園はいいですよ、駿佑さん。命の息吹にあふれてます」
メルセデスを走らせ、二人は植物園へ行った。
聖の言う通り、そこは濃い緑に覆われ、美しい花々であふれていた。
散策しながら植物について語る聖に、駿佑はひとつひとつ頷く。
彼はフローリストになるための勉強ができる大学に進学し、卒業後は駿佑が出資した花壇の店長となった。
「でも、駿佑さんまで同じ学校に入学するなんて、思ってなかったな」
「聖と共通の話題を持ちたかったんだ」
駿佑は、聖の花屋のスタッフとして働いている。
たくさんの花が入った、重い花瓶や鉢植えを運んだり、配達のために一日中運転を続けたりと、主に力仕事担当だ。
しかし望み通りの、きれいな仕事に就いていた。
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