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第十四章・7
汗をかいた額に、涼しい風が心地よい。
聖は軽く瞼を閉じて、駿佑からのキスに応えていた。
気の早いセミが、鳴いている。
鳥のさえずりが、聴こえる。
優しい、しかし長いキスを終え、駿佑はそっと聖から離れていった。
「魔法は、解けましたか?」
「ああ。これから話す言葉は、飛沢 駿佑の真実の心と思って聞いてくれ」
何だろう。
真剣な、駿佑さんの顔つき。
「実は、こういうものを用意していた」
駿佑はポーチから、小さな箱を取り出した。
「君に贈りたい。開けてくれ」
「でも、誕生日はまだ……」
「特別な贈り物だ」
いぶかしく思ったが、駿佑からのプレゼントは何でも嬉しい聖だ。
わくわくと、上質のリボンを解き箱を開けた。
中には、もう一つ箱が入っていた。
ベルベットのジュエリーケースだ。
まさか。
聖は、震える手でそれを開けた。
シンプルな、だがグレードの高いダイヤモンドがあしらわれた指輪が、そこには収められていた。
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