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第47話 撮影現場2

蘇我総司と如月優を見る木村君の目に、 大我君はあまりいい顔をしなかった。 “もしかしてヤキモチかな?” とフッと思った。 「お兄ちゃん、あの人達知ってるの? あの人達有名な人達なの?」 大我君が木村君のシャツの裾を掴んで聞いてきた。 「大我君,彼等はね、αとΩのすっごい有名な夫婦でね、 それに何と言ってもどちらも男性なんだよ」 そう木村君が説明したのでギョッとした。 “大我君って…… まだαやΩについて知らないよね? そんな情報言ってもいいのかな?” そう思っていると、僕が思ったように、 やっぱり大我君は訪ねてきた。 「ねえ、αとΩって何?」 木村君は蘇我総司と如月優に興奮したようにしていたので、 大我君の声が聞こえて無いようだった。 “もしかして、僕がその質問に答えるの? 木村君、あまりにもの興奮で大我君の質問、 聞こえて無いみたい……” 憧れの俳優に会った木村君の興奮もわかるけど、 僕も、大我君に何と返していいのか分からなかった。 でも、大我君を無視するわけにもいかず、 「あのね、多分大我君にその話は早いかもしれないけど、 その事については、大我君のお父さんとお母さんの方が 僕たちよりもうまく説明できると思うよ?」 そうやってアタフタと何とか繕っていると、 「君が大我君? 今日は宜しくお願いします。 僕は如月優です。 そして……彼が蘇我総司です」 と彼らがニコニコとして挨拶に来た。 僕は祖父母が家の外では、 プライベートの自分達を隠していることを知っている。 だから、こういう場ではどういった行動をとらなければいけないか、 小さい時からかなちゃんに教え込まれていた。 だから彼らが近くに来た時、 僕は軽く会釈だけした。 「今日は大我君とジュリアちゃんの両親役で一緒に撮影します。 何か分からない所があったら何でも聞いてね」 そう言ってお祖母ちゃんは挨拶をした。 そして大我君と一緒に居る僕たちを見て、 「君達は……?」 と、さも初対面の様に尋ねた。 だから僕も彼らに会うのは初めてのように接した。 でもボロが出ないかドキドキとした。 先ずは木村君が挨拶した。 「あの…… 大我君の付き添いで お邪魔している木村葵って言います! まさかここで蘇我さんご夫婦に会えるとは思っていませんでした…… あの……迷惑でなければ、一緒に写真良いですか? 出来ればサインもお願いしても良いですか?!」 積極的だけど、木村君がカチンコチンになって尋ねた。 「僕達ので良ければ勿論だよ!」 お祖母ちゃんは優しくそう言った。 するとお祖母ちゃんに続いてお祖父ちゃんが、 「君は一緒に写らないの~? そうだ! 君にも大サービスでサインを書いてあげるよ? あっ、よかったらホッペにチューは?」 そう言ってお祖父ちゃんが僕にニヤニヤとしていた。 そんなお祖父ちゃんをお祖母ちゃんは肘でつついていたけど、 木村君は凄く興奮して、 「大物なのにとてもフレンドリーだね! 更に大ファンになっちゃったよ~」 と僕に耳打ちした。 “もしかして木村君、お祖父ちゃんのホッペにチューが欲しい?” と一瞬クラっと来たけど、 「え? 彼って木村君のお母さんがファンって事じゃなかった?」 と、気を持ち直してそう尋ねた。 「陽一君、小さい時からお母さんと一緒に、 あんなかっこいい映画をいつも見てたら、 そりゃあ、僕だって少なからずとも……」 と木村君は照れたようにして僕に耳打ちした。 その光景を面白くない顔で見ていたのが大我君だった。 でもそれが幸いしたのか、 「お兄ちゃんは僕だけを見ててね! 僕、絶対、絶対うまくやるから! 今日の中で一番かっこよくするから!」 と何やらやる気が出たようだ。 もしかしたら、もしかするかも…… 昔から、青木さんのカフェのように、 蘇我総司と共演する人は有名になるって言うジンクスもある。 お祖父ちゃんはモデルではないけど、 もとはモデルから始まったと聞いた。 もしかしたら、大我君にとってもいい影響になるかもしれない。 「なんだかうまい方向に動いて行ってるみたいだね?」 僕がそう言うと、 「泣く子も黙る蘇我総司だね。 やっぱり大物は違うな~ 僕、今日は手を洗わないよ!」 と、さっきお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが 握手してくれた右手を左手でさすって、 匂いを嗅いでいた。 「ちょっと、木村君、何匂い嗅いでるの?!」 ビックリしたようにして聞くと、 「如月さんって良い匂いがするね。 なんだか陽一君のお母さんみたいな匂いだ……」 そう言われ、ドキッとした。 やっぱり、発情前の番の匂いをかぎ分けられるΩは油断ならないと思った。 そこに、 「木村君、久しぶりだね、 いつも陽一と仲良くしてくれてありがとうね」 そう言ってかなちゃんがやってきた。 「あ、佐々木さん、お久しぶりです。 この間はお世話になりました」 そう言って木村君も挨拶していた。 「それで…… 木村君のαの君はどこに……?」 そうかなちゃんが訪ねると、 木村君はかなちゃんを連れて、 先ほど撮影のセットの所に連れていかれた大我君の方へと歩いて行った。 行く間際にかなちゃんが、 「矢野先輩も来てるよ」 そう言って僕に耳打ちをしてヒョイっと指をさしたので、 そちらの方を見ると、 矢野先輩がドアの所でポールと何か話をしていて、 僕に向かって手をヒョイっとあげて挨拶をした。 「先輩来てたんだ!」 すぐに駆け寄っていくと、 「うん、ポールの計らいでね、 インテリアをね、 うちの会社が受け持っているんだ」 と教えてくれた。 「そうだったんだ。 だからなじみのあるような内装だったんだね。 一言教えてくれてたらよかったのに!」 そう言うと、 「大我君が木村君の番なんだってね」 そう言って先輩が耳打ちしてきた。 「かなちゃんから聞いたんですか?」 「ううん、木村君が教えてくれたんだ ほら、この前のお泊りで 陽一君が要君と一緒に朝食を作っているときに。 今日は陽一君は最後までいるの?」 「うん、とりあえずは、 大我君の緊張をほぐすために木村君の助手みたいな感じで来たんだけど、 お祖父ちゃんに、いいとこ持ってかれちゃった」 そう話をしていたら、 「ん? 僕が何々?」 とお祖父ちゃんが後ろから声をかけてきた。 「ちょっと! 人に聞こえたらどうするの! ここには記者とか入ってるんだから気をつけなくちゃ!」 僕の気苦労は何のそので、 「矢野く~ん! 最近陽ちゃん言うようになったと思わない? 小さい時はあんなに可愛かったのに……グスン これからどんどん成長して すぐに僕の所から飛んで行ってしまうんだよね…… 陽ちゃ~ん、もっとお祖父ちゃんの所に遊びに来てよ~」 とまた訳の分からないことを言い出したので、 誰も聞いていないか、僕の方がハラハラとし始めた。 「司兄、陽一君は家でもらい受けるので、 今のうちに覚悟していてね。 遊びに来ないどころじゃなくなるから! あっ、なんなら今年の夏休みを利用して パリにホームステイに来ない? ね? そうしよう? 陽一君、まだフランス語ばっちりでしょう?!」 「ポ~ル~ 家の大事な陽ちゃんを、 そんな遠いパリになんてやるわけないでしょう? ほんと、寝言は寝て言ってよね!」 「司兄、陽一君は遅かれ早かれ、 ジュリアのお婿さんになるんだから、 司兄がグチグチ言ったところで、 何も変わらないよ?」 ポールがそういったところで、お祖父ちゃんにより、 「陽ちゃん、陽ちゃんはフランスになんていかないよね? 僕を置いて行ったりしないよね?」 と急に話が振られたので、 「え? 僕?」 と慌てた。 ポールとお祖父ちゃんが僕を挟んで向き合う中、 「大丈夫だよ、陽一君は僕がもらい受けるのでご心配なく」 と急に先輩が清々しく口を出したので、 僕も、ポールも、お祖父ちゃんも、 「えっ?!」 と言って先輩を見た。

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