もう一回、を受け入れてからが長かった。 「あぁっ、は、んあっ……！　うあ、そこ、きもちい……」 　快楽に溺れるミヅキに引きずられるまま、俺は彼のナカを犯し続けていた。体勢を変える度に先端が内壁を抉る場所が異なり、その都度ミヅキは気持ちよさそうな反応を示す。もう全身が性感帯と化しているんじゃないかってくらいの乱れ具合だ。 　けれど、彼は俺が達しそうになると、意図的に締め付けを緩めて快楽を逃がすのだ。おかげで最早下半身の感覚が無い。本当に溶けてしまったかのようだ。 「ミヅキ……俺、もういい加減イキたいんだけど……」 「や、まって……あと、すこしだけ……っ」 　まだ抜かないで、と肩越しに振り返った彼の、甘ったるい声と瞳で強請られれば、是非もない。俺は黙って、背後からミヅキのナカに埋め込んだ屹立で奥を突き、時折白い項を甘噛みしては、彼が満足するのを待つしかないのだ。 「りょう、たろーさん……かお、みたいです……」 「ん」 　俺は短く答えると、ナカに入れたままの状態で、ミヅキの身体をひっくり返した。イイ所を擦り上げられたのか、ミヅキが高い声で喘ぐ。 「ひゃあんっ！」 「気持ちいいか？　ミヅキ」 「んっ、きもちい、です……もっと、ほし……」 　身体を密着させるように彼が俺に抱きついてくる。 　可愛いな、という想いが胸を満たしたと同時に、俺は大切なことを伝え忘れていたことを思い出した。 「……なあ、ミヅキ」 「は、い」 「好きだよ」 「……っ、へ……？」 　きゅうん、とミヅキのナカの締め付けが一瞬強くなった。わかりやすいな。 「いや、言ってなかったな、と思って……。俺がお前に触ってて感じる気持ちとか、この行為がこんなに気持ちいいこと。そういうの総括した時の、胸の中が熱いようなこれを……たぶん、こう呼ぶんだろ？」 　だから俺はミヅキが好き。 　相変わらず恋愛感情への理解がふんわりとしていることについては申し開きも無いが、それでも、少しでも伝えておきたいと思ったのだ。 　これから、この先もずっと、俺たちは何度もこうして、幸福な気持ちで肌を重ねるのだろうから。 「ミヅキ……？」 　何も反応がない彼が気になって顔を覗き込む。ミヅキは、静かに涙を流していた。快楽によるものではなく、感情の発露によるもの。 「ちょ、なんで泣いて……」 「ぅえ、ごめんなざ、うれじぐで……っ」 「う、うわマジか……とりあえず落ちつけって……」 　無理に話そうとしたのが仇となったか、ミヅキは堰を切ったように泣き出した。それはもう、べしょべしょに泣いている。整った顔が可哀想なくらい。 　俺の一言なんかで、こんなに感情が乱れてしまうのが堪らなくて、思わず止まっていた腰を突き上げた。 「ぁんっ！？」 「なあミヅキ。これからはもっと、たくさん伝えていくから。――だからもっと、可愛い顔、見せてくれよ」 　奥を突くスピードを上げた。もうこれっぽっちも余裕なんか無くて、最奥で果てて彼を汚すことしか考えられない。 「ああっ！　ひゃ、らめ、りょおたろ、さ……！　もっと、ゆっくりぃ……！　こわれちゃう、よぉ……っ」 「っ、ごめ、ミヅキ……っ、良すぎて、腰止まんな……」 「らめぇ、っ！　きもち……あっ、ああ！　も、いっちゃ……！」 　肌と肌がぶつかり合う音。そして、濡れた結合部が泡立つほど激しい律動。脳味噌が溶け出してしまったんじゃないかという錯覚を抱くくらいの途轍もない快感。 「っあ……！　も、いく……！」 「んああっ、だして、なかでだしてぇっ……！　もっと、いっぱい、っ……！！　っや、あぁ、は、うああ……！！」 　一足先に達したミヅキにきゅうう、と一際強い力で屹立を締め付けられ、先端を最奥に押し込んだタイミングで、俺も達した。頭が、真っ白になる。何も考えられない。ただただ、腰が蕩けそうなほどに熱い。気持ちいい。 「っは、あー……」 　精根尽き果て、ミヅキの上に倒れ込む。なんとか彼を押しつぶさないようにだけ気をつけ、自分の身体を少しずらした。 　ミヅキはまだ快楽が持続しているのか、断続的に華奢な肢体をびくんびくんと跳ねさせている。それに伴って内壁も蠕動し、まだナカに埋めたままのモノが刺激される。 　さすがにもう勃つ気はしないけれど、達したばかりの身体にこういう刺激は毒だ。最後の力を振り絞り、俺はミヅキのナカからモノを抜いた。 「あぅ……」 　抜き去られる感触にも感じるのか、彼の身体がひくりと痙攣し、栓を失った後孔から、俺の注ぎ込んだ精液が溢れてくる。……目の毒。 　身体を洗ってやらねばならないな。そう思いつつも、もう指一本だって動かしたくないくらい気怠い。俺はごろりとミヅキの身体の横に自分の身体を倒し、上がらない腕を気力だけで伸ばして、彼を抱き寄せた。 「……満足出来たか？」 「っはい、すごく……。好きなひとと、ひとつになるのって、こんなに気持ちいいんですね……」 　恍惚とした表情でミヅキが言う。その言葉に、俺も黙って頷き、心地良い睡魔に誘われるまま、眠りに落ちた。