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ホワイトソース、海と陸【没】
ヨーグルトが飛び跳ねて、にんまりしている。どうせその可愛い口から出てくるのは下品な言葉だ。
「顔射〜」
割と今までのプラトニックな関係を気に入っているのだけれども、今夜一線、越えてみるか?
「他の人の前で言うなよ」
俺の指が、彼の肌に触れたヨーグルトを拭う。舐めようか、洗おうか、7対3で迷って、温かい手が俺の指を引っ張る。また温かい。乾燥した俺の手が何度か重ねた唇に消える。やられたな。
「他の人には絶対するな」
「分かってるって!お前だけ!」
お互いに正反対で、俺には彼だけ。俺と彼は月と太陽だなんてすれ違って切ないから、彼と俺は海と陸。隣り合ってさ。空と海?俺は空なんて広くはなくて、海なんて深さはない。彼にも俺だけだと信じたいけれど、人懐こい彼が誰かに付いていきはしないかと狭く浅くなる。
「シチュー食いてぇな、今日。ごはんにかけてさ」
「カレーか?」
それか、ビーフシチューと勘違いしているか。
「シチューだよ。ごはんにかけねぇの?」
「かけない。かけるのか?」
「かけるよ。1億3000万人はかける。ごはんの真上にかけるやつもいいけど、オレはカレーみたいに海と陸みたいにすんの」
こういう不思議なことを言い出すのが可愛い。俺の家族はかけなかったから、そこから-4にしてくれ。
リクエストのシチューを作る。にんじんは小さめ、少量。ブロッコリーは入れなかった。パッケージどおり鶏肉にしてみる。味は悪くない。パンを焼こうとして手が止まる。白飯にかける、そういう話だった。寝こけている彼を起こす。なんだか贅沢だ。
【未完結】
* * *
オチを忘れた。
2020.12.28
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