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アイしiされ合図 ※
monogatary.comから転載
お題「1番好きなアイス」
***
好きなアイスは? とコンビニに行ったらしいあいつからメッセージが来ていた。アイスは好きじゃない。あの大味のせいか、その甘さの裏には意外と塩分が多いからか、はたまた冷たさのせいか、やたらと喉が渇くから。
けれども無いと答えるのは、素気無いだろうか?甘えたほうが、あいつは喜ぶんだ。
<お月見だいふく>
それはバニラアイスが、季節限定で違う味もあるけれど、薄い餅みたいな生地にくるんである、2つ入ったアイス。
片方はやつにあげてしまえばいい。アイス大好きだからな。
それからあいつが帰ってきて、買い物袋には飲み物と氷とアイスが1つ入っていた。
「待ちきれなくて先食べちゃった」
やつはアイスキャンディの棒を齧っていた。人工的なパイナップルの匂いがした。パイナップルは、確かにこいつらしい。
「さ、食えよ。夏の終わりのアイスって最高ぢゃね」
棒が器用にあいつの口元で上下に揺れる。
まだ食べたい気分ではなかったが、あいつがせっかく買ってきたんだ。俺は食べることにしたけ れ ど も
「1コ食うか?」
満面の笑みで「うん!」って言うはずなんだよ、こいつは。
「え……マジか、おまえ」
顔を真っ赤にされて、俺は何か変なことを言ったかと自分の言葉を反芻する。断りもせずに買ってきてもらったものに対して失礼だったか?それくらいしか思い当たる節がない。
「あ、あのさ、おまえ……これ1コくれるって、もうプロポ〜ズぢゃん………」
頬を両側から押さえて、アイスを食べたはずのそのつらは熱そうだった。
俺は唖然として、何も言えなくなってしまう。俺の気持ちが何故、バレている?
いやいや、プロポーズまではいかなくても、まず告白というフェーズにすら、まだ辿り着いてないというのに。何がどうなって、プロポーズという単語が鈍感なこいつの中に現れた?
「だってめちゃくちゃ美味しいのに、2コしかないんだぜ?それを1コくれるって、そんなのもう、プロポーズだろ。そっか、そっか~、今思えば、あれもこれも、オレのコト好きだったんだなぁ」
まずい。このままでは冗談になる。ノるしかない。でなければ、また躊躇う。
「ああ、そうだよ。プロポーズだ。で、おまえはそれを食うのか、食わないのか?」
真っ赤になってるやつと、汗ばむ俺で、先にアイスが溶けそうだった。
***
930字強
いつものあいつら。
2022.9.11
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