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砂糖対応塩ラーメン ※
monogatary.comからの転載。
お題「残り30秒」
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『これめっちゃ楽しみにしてたカップ麺。絶対話しかけんなよ!』
俺の可愛いカワイイかわいい恋人は、付き合っているという認識に欠ける。
彼はカップ麺が大好きで、新作なんかは発売日に買ってくる。俺はカップ麺よりも優先順位が低い。いいや、大丈夫だ……僅差で3位だから。カップ麺が2位。1位のステーキには勝てないが。何故俺は3位なのか……違う。何故俺が食べ物ランキングに入っているのか。それは……まぁ、まぁいいだろう。俺は彼にとって食べ物でも構わない。是非とも非常食にしてくれ。
彼がカップ麺を食べ終われば話しかけてもいいわけだ。しかし癪ではないか?カップ麺に俺はこの恋人とのコミュニケーションを制限される。
いやいや、彼のためでもあるんだぞ。喉に詰まらせたらどうする。
お湯を入れて3分。何か人生を左右するカウントダウンに思えてしまう。3分後、俺は自由を制限されて、好きに彼に話しかけられない。いいや、俺は元々そんな喋る方ではないから、そんな彼の食事の数分間を潰してまで話すことがあるわけではないけれど……
俺が気に入らないのは彼ではない。この憎いカップ麺だ。不思議肉増量スペシャル醤油じゃないんだよ、スペシャル醤油じゃ……
どうせ俺は、野菜盛り盛りの塩みたいな男だよ。バターでも背脂でも付け足してくれ。
俺も一緒に壁掛け時計を見て、彼はスマホを見ながら左右にゆらゆら揺れている。
なんだか気に入らない。俺のほうが"美味しい"ぞ。俺のほうを見ろよ。俺はおまえの恋人だ。俺を構え。
2分間の悶々。3分間、湯が麺をふやかす間、俺は彼にふやかされて、もうでろでろに伸びきって、これ以上どうしていいのか分からない。溺れているんだぞ。冷えもせずに。
秒針が一番下を向いて、これから針が坂道を登る。
あと30秒。
ああ、そうだった。彼は硬めが好きだから、15秒前にはもう食べる。彼がフォークを握って、彼はフォークで食べるから、俺はその手を掴む。
カップ麺の前に3位の俺をまず食えよ。
***
820字弱
2022.11.7
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